高齢者の不眠の特徴とは?原因から対策方法まで詳しくご紹介

高齢の方に多い不眠の悩み。高齢者の不眠は加齢による身体機能の低下が原因と言われています。高齢者本人が眠れないことで、介護をする側も寝られない…といった事態も起こりがちです。この記事では、高齢者の特徴とも言える不眠について解説。原因から、介護施設でできる対処法・予防法まで詳しくご紹介していきます。介護職に携わるうえで、高齢ならではの不眠という問題を知っておくことはとても大切です。この記事を参考に、理解を深め、対処法も学んでおきましょう。

高齢者の不眠の特徴とは?

加齢に伴って、健康な方でも睡眠の質は変化します。そのため、高齢者の不眠は老化現象の一種と言えるでしょう。高齢になると老眼になる、白髪が増えるといったように、睡眠にも変化が生じます。
高齢者の場合、体内時計の変化や体温・血圧のほかホルモン分泌の影響により、まずは早寝早起きになる傾向があります。その後、眠りの浅いノンレム睡眠の割合が増加するため、ちょっとした物音や尿意で目が覚める中途覚醒や早朝覚醒が増加。結果、睡眠時間が短くなり、睡眠効率も悪くなって慢性的な不眠へと陥ってしまうのです。

高齢者特有の不眠の原因は?

高齢者の不眠原因の多くは、睡眠の質が落ちることで生じる、生活習慣の変化や乱れです。また、病気による睡眠問題も挙げられます。

生活習慣の変化や乱れ

高齢になると日中の活動が減るため、日常生活のメリハリが無くなってしまいます。日中の活動が減ると、外出が減るため日光に当たる機会が減少。社会との接触機会も少なくなり、生活習慣の調整が難しくなってしまいます。そのほか、配偶者との死別や退職による孤独、経済的な不安などがストレスとなり、寝つきの悪さにつながる場合もあるようです。

認知症によるもの

高齢者の不眠の原因となる疾患で考えられているのが、認知症です。認知症による不眠は眠りの浅さが特徴。深く眠れないことが認知症の進行を早めてしまうとも言われています。連続して1時間眠ることが困難となるケースもあり、本人だけでなく介護を担うご家族にとっても辛いところです。
認知症は、夜に眠れず昼寝が長くなり、昼夜逆転現象に陥りやすいという特徴もあります。さらに、せん妄による睡眠障害も発症しやすく、覚醒時は寝ぼけた状態、睡眠時は落ち着きなく動いてしまうという症状が現れることも。進行を抑えるためにも、認知症の方はとくに不眠対策が必須になります。

睡眠障害になりやすい病気によるもの

睡眠障害は、これから紹介する4つの病気により引き起こされている場合があります。

  • 周期性四肢運動
  • むずむず脚症候群
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • レム睡眠行動障害

「周期性四肢運動」や「むずむず脚症候群」は、寝ているときに足がピクピク動くという症状があります。夕方から深夜にかけて出現することが多く、足がむずむずする、痛がゆい、じっとすることに不快を感じ、足を動かさずにはいられなくなるという病気です。寝ている間も足を動かしてしまうため、深い眠りを妨げてしまいます。
ほかにも、大きないびきとともに睡眠中に呼吸が止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群」や、大きな声で寝言をいう、寝ぼけて行動してしまうといった「レム睡眠行動障害」もあります。これらの病気により睡眠障害が起こっている可能性があることを念頭においておきましょう。

介護施設での対処法・予防法は?

高齢者の不眠に気がついたら、早めに対処することが重要です。介護施設でできる不眠の対処法・予防法をご紹介していきます。

不要な睡眠を減らす

高齢者の中には、やることがないから横になる、夜も早く寝るという方が多いです。しかし、日中に不要な睡眠をとったり、眠くもないのに早く寝たりすると、夜の睡眠の質を下げる原因になります。質のよい睡眠をとるためには、眠くなるまで床に入らないという工夫が必要です。
日中に午睡をする場合は、入眠前にカフェインの入った飲み物を摂取してもらうのもおすすめ。スッキリとした寝起きにつながるため、だらだら昼寝をすることを予防できます。

日中の活動量を増やす

日中は屋外で日光を浴びる、活動量を増やすことも大切です。日中の活動は、程よい疲労感につながり、夜の寝つきをよくします。外で散歩する、屋内でレクリエーションを行うなどの工夫をして、昼間の過ごし方を考えておきましょう。

寝る前のテレビ・スマホを控える

就寝前にテレビやスマホを見るという利用者さんもいるかと思いますが、寝る前のテレビ視聴やスマホ操作は不眠を引き起こします。テレビやスマホの光は脳を覚醒させる働きがあるため、睡眠が浅くなる、寝つきが悪くなるといった症状を引き起こす原因に。質のよい睡眠をとるためには、寝る前のテレビ視聴は控える、スマホを寝室に持ち込まないといった工夫も大切です。

アルコール摂取に注意する

寝つきがよくなる作用のあるアルコールですが、飲みすぎると眠りを浅くしてしまうため注意しましょう。アルコールには利尿作用もあるため、トイレのために中途覚醒や早朝覚醒をしやすいという特徴もあります。楽しみ程度であれば問題ありませんが、連日大量に摂取するといった行動は、慢性的な不眠へつながるリスクがあるため、注意が必要です。

睡眠薬で治療をしてみる

高齢者の慢性的な不眠を改善するためによく導入されるのが、睡眠薬を使用した薬物療法です。睡眠薬の種類はとても多く、効能も薬によりさまざまなため、薬の取り扱いは慎重に行いましょう。医師は、高齢者一人ひとりの不眠症状に合わせて薬を処方します。ほかの利用者さんの薬と間違える事態がないよう注意してください。
2013年に厚生労働省が発表した「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」では、不眠に対する薬物療法の概要が分かります。代表的な薬の作用をまとめた表もあるので、ぜひ参考にしてください。
また、漢方やサプリメントで睡眠の質を高める方法もあります。ただ、高齢者本人が自己判断で内服している可能性もあるため、医師が処方している薬との飲み合わせに問題ないか、確認することも大切です。

利用者さんごとの不眠の原因を見極めて対処しよう!

高齢者の不眠は、介護に携わるうえで、必ずといっていいほど直面する問題です。眠れないことによるストレスや異常行動は、利用者さん本人はもちろん、介護をする側にとっても辛い状況。利用者さんごとに異なる不眠の原因を抱えているため、適した対処法ができるよう、この記事を参考にしてみてください。

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