口腔体操の目的はオーラルフレイルの予防にあり!行うときのポイントは

オーラルフレイルの予防のため、口腔体操を取り入れている介護施設も多いでしょう。食事前の誤嚥防止以外にも、のどの筋肉を鍛える、唾液の分泌を促すなどさまざまな効果が期待できる口腔体操。しかし、口腔体操の目的をきちんと理解していない方もいるかもしれません。そこで今回は、オーラルフレイル予防の重要性と口腔体操の目的について詳しく解説していきます。

口腔運動の目的はオーラルフレイルの予防!まずは基本知識を理解して

口腔運動を行う目的は、オーラルフレイルの予防にあります。まずは基本知識を押さえていきましょう。

フレイルとは

フレイルは、虚弱を意味する「Frailty」の日本語意訳で、健康と要介護の中間にあたり、加齢により心身の活力が低下した状態を差します。病気や事故などで突然要介護状態になる方もいますが、多くの高齢者は要介護状態に至るまでにフレイルの時期を経ているというのが最近の考え方。フレイルの状態が続くと生活の質が落ちたり、病気を引き起こしたりといったリスクがあります。しかし、フレイルの段階で対策することで、進行を予防しもとの元気な状態に戻ることも可能です。

口腔体操の目的であるオーラルフレイルとは

フレイルはオーラルフレイルから始まるといわれています。オーラルフレイルとは、噛む、飲み込む、話すなどの口腔機能が衰えている状態のこと。口腔機能が衰えてしまうと食生活に支障をきたすだけでなく、会話を避けるようになり社会との関わりが減ってしまうなど、フレイルを進行させる要因になることもあります。

オーラルフレイルの原因と症状

オーラルフレイルの原因は、口腔機能の衰えにあります。加齢による口周りの筋肉量の低下に加え、虫歯や歯周病などの疾患が原因になることも。定期的な検診や早めの治療が大切です。

以下の症状が見られると、オーラルフレイルの可能性があります。

  • 食べこぼしが増える
  • むせやすい
  • 柔らかいものばかり食べる
  • 口が渇きやすい
  • 活舌が悪い

オーラルフレイルの初期段階で多いのは、咀嚼機能の衰えです。咀嚼機能とは食べ物を噛んで唾液と混ぜ、飲み込める状態にする一連の動作のこと。咀嚼機能が衰えると食べられるものが制限されるようになります。はじめは些細なトラブルですが、食事の楽しみが失われる、会話が楽しめなくなるなど、生活の質にも影響を及ぼすでしょう。

オーラルフレイルが進行するとどうなるの?

オーラルフレイルには4つの段階があり、徐々に進行していくといわれています。

<オーラルフレイルの進行段階>

  1. 口の健康意識が低下し口腔状態が悪化する
  2. 口の些細なトラブルにより食習慣が悪化
  3. 口腔機能の低下が進行
  4. 咀嚼機能の低下

オーラルフレイルの初期段階は、人に会わないから歯磨きを怠るなど、社会から離れ自分の健康に興味が薄れていくこと。それをきっかけに、徐々に上記の見出しで挙げたようなトラブルが現れるようになります。

オーラルフレイルの進行により食欲が低下すると、食事からの栄養が十分に取れなくなり、栄養不足に陥る可能性も十分にあるでしょう。2もしくは3の段階で適切に対処できれば、もとの状態に戻すことも可能ですが、4まで進行してしまうと栄養・運動障害に陥ってしまい、改善が困難になるそう。些細なトラブルを感じた段階で対処することが大切です。

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口腔体操をするとこんなメリットがある!

口腔体操の目的は、オーラルフレイルの予防です。口腔体操で口周りや舌を動かすことで、利用者さんの口腔機能の低下を防ぐことにつながります。口腔体操の種類によっても異なりますが、以下のような効果が期待できるでしょう。

・口や舌の動きをスムーズにする
・飲み込む力をつける
・噛む力をつける
・滑舌をよくする
・舌の力をつける

どれも食事や会話を楽しむために欠かせない要素ばかりです。オーラルフレイルを予防するため、口腔体操を日常的に取り入れると良いでしょう。

口腔体操をするタイミングや注意点はある?

口腔体操の目的が理解できたら、行うタイミングや注意点についても確認していきましょう。

口腔体操のタイミングは毎日の食事の前

口腔体操するベストなタイミングは、毎日の食事の前。食事の前に口腔体操をして唾液を分泌しやすくすることで、嚥下をスムーズにするのが目的です。食事が食べやすくなると、誤嚥の防止にもつながります。顔周りを動かすだけなので、車いすの利用者さんも含めみんなで行うことができるでしょう。

オーラルフレイル予防におすすめの口腔体操は

口腔体操にはさまざまな種類があります。その一部をチェックしてみましょう。例えば、「あー」「んー」の体操。口を大きく開ける、口を閉じ奥歯を噛みしめる動きを繰り返すことで、口と舌の筋肉を鍛えることができます。むせることが多い利用者さんにおすすめなのは、パタカラ体操。パタカラをそれぞれ連続で発音し、口周りの筋肉や飲み込む力を鍛えます。

また、普段しているうがいもオーラルフレイル予防の一環になります。ブクブクうがいは頬や舌をスムーズに動かすトレーニングに、ガラガラうがいは舌の奥の筋力を高めるトレーニングになり、普段から意識して行うことが大切です。

口腔体操と同じく口腔ケアにも力を入れて

オーラルフレイルの予防には、口腔体操に加え口腔ケアも重要です。口腔ケアとは、その名の通り口の中をきれいにして清潔を保つこと。唾液の分泌を促進したり、虫歯や歯周病を予防したり、味覚を改善したりと、健康につながるさまざまな効果が期待できます。

口腔体操と合わせてうがいや歯みがき、舌の清掃などの口腔ケアを習慣にして、利用者さんのオーラルフレイルの予防に努めることが大切です。

オーラルフレイルの予防に口腔体操を取り入れよう

口腔体操を行う目的は、オーラルフレイルの予防にあります。オーラルフレイルが進むとフレイルが進行してしまう可能性が高いので、口腔体操でしっかり予防することが大切です。口腔体操にはたくさんの種類があるので、利用者さんごとの目的に応じて選ぶのも良いかもしれません。楽しい気持ちで取り組めるよう、声掛けや口腔体操のバリエーションを工夫してみるのもおすすめです。

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