ケアラーとは?抱える問題や地方自治体での支援策を紹介

ケアラーやヤングケアラーという言葉をご存知ですか?2020年12月から2021年1月にかけて厚生労働省と文部科学省が行った調査によると、中学生の約17人に1人がヤングケアラーであることがわかりました。介護現場やごく一部の方だけの問題ではなく、今や日本全体に関わる問題となっています。
そこで今回は、ケアラーの定義やケアラーが抱える問題について解説し、地方自治体が行っている支援策や条例について紹介していきましょう。

ケアラーやヤングケアラーとは?どういう意味?

高齢者や身体上、または精神上の障害や病気を抱える方の中には、日常生活を送る上で介護や支援が必要な方がいます。ケアラーとは、そういった方を無償でサポートしている親族や友人などのことを指す言葉です。

英語では「carer」と表記します。ケアラーのうち、18歳未満のケアラーをヤングケアラーと呼びますが、特に法令上の定義はありません。ケアラーが行う主なサポートは、以下の通りです。

  • 要介護者・要支援者の看病や介護
  • 買い物や洗濯、掃除などの家事
  • 他の家族の世話
  • 金銭面でのサポート など

このようにさまざまなことを、ケアラーが担っている場合が多いです。

今ケアラーやヤングケアラーが抱える問題とは?

ケアラーやヤングケアラーが抱える問題について考えていきましょう。

ケアラーやヤングケアラーに共通する問題

大人のケアラーとヤングケアラーに共通する問題は、主に2つあります。1つ目は、社会的な孤立です。身近に介護や支援を必要とする方がいるために、なかなか定職に就けず、ケアラー自身の社会的なつながりが絶たれてしまうケースがあります。それによって、相談する仲間や手段を見つけられず、精神的に追い込まれてしまう場合も。

2つ目は金銭的な問題です。先ほどの社会的な孤立を要因として、収入や貯蓄の減少など経済的な負担がケアラーにのしかかりやすくなることに。金銭的な問題は他人には相談しにくいと感じる方もいるため、さらに内にこもりやすくなってしまいます。これにより、地方自治体や支援団体などが現状を把握しづらくなることが原因で、いつの間にか問題が大きくなってしまうのです。

この2つが統合し引き起こされる問題が、いわゆる「介護疲れ」。ケアラー自身が孤独を感じ精神的に追い込まれてしまい、要介護者・要支援者に危害を加えるなどの問題や事件が発生することもあります。

ヤングケアラーが抱える問題

ここでは、ヤングケアラーが抱える問題について見てきましょう。厚生労働省の「令和2年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業」の中で、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2021年3月に発表した「ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書(案)」をもとに紹介します。

この調査では、ヤングケアラーという概念を認識している方は、2019年では74.7%に対して、2020年には93.3%と認知度はアップ。しかし、実態把握に関しては、把握していると答えた割合が2019年で30.1%、2020年で30.6%とほとんど変化がありませんでした。
これらのデータからわかるのは、ヤングケアラーは表面化しづらいということです。子供の頃から日常的に介護や支援を行っており、その対象が家族などの近親者のため、「自分が介護を行うのが当たり前」と思っている背景もあります。

こういったことから、ヤングケアラーが抱える問題は主に4つと考えられるでしょう。

  • 相談先がない・わからない
  • 学業への影響
  • 友人との交流が減る
  • 健康や精神面への影響

ヤングケアラー自身が問題と認識しておらず相談の必要がないと思っていることや、相談しようと思ってもどこに相談したら良いのかわからないという問題があります。

また、要介護者・要支援者に日常的な介護が必要な場合は、ケアラー自身が家を離れることができないケースも多いようです。学校などに通えなくなり、勉強に遅れが生じて希望の進学が難しくなることもあるでしょう。

介護や支援に時間を取られることで、友人との交流なども減る可能性があります。友人関係から孤立する、コミュニケーション能力の低下が顕著になるかもしれません。

さまざまな問題が影響して、ヤングケアラー自身の健康や精神面が悪化していく可能性があるでしょう。

日本の地方自治体におけるケアラーの支援とは?条例などを紹介

さまざまな調査が行われてきたことにより、ケアラーの問題点が浮き彫りになり、日本でもケアラーへの支援が急ピッチで検討され始めました。最後に、地方自治体におけるケアラー支援についてその代表例を紹介します。

埼玉県

埼玉県では、2020年3月に「埼玉県ケアラー支援条例」を制定。「全てのケアラーが個人として尊重され健康で文化的な生活を営むことができる」を基本理念としています。県民や市町村など多様な主体が連携を取って、ケアラーが孤立しないようサポートしていくことを表明。

具体的には、ケアラーやヤングケアラーの認知度を上げるために、啓発リーフレットを配布し、ケアラーを支援する人材を育成しています。

ヤングケアラーと関わる教育に関する業務を行う関係機関では、ヤングケアラーの相談に対応。適切な支援機関への案内や取り次ぎなどを行い、支援するようにと条例で定めました。

神奈川県

神奈川県は、2021年3月に「ケアラー支援庁内連絡会議」を立ち上げました。課題の整理や支援の充実・各団体との連携などを行い、ケアラーやヤングケアラーを支援しています。

ケアラーやヤングケアラーの実態把握に努め、各種調査を行っています。「かながわケアラー支援ポータルサイト」では、ケアラーが利用できる支援一覧がまとめられていますので、どんな支援があるのか目を通してみるのも良いでしょう。

ヤングケアラー専用のページも立ち上げ、ヤングケアラーの周辺にいる大人や関係機関にあてたメッセージも掲載。ヤングケアラーが相談しやすいように、相談窓口や相談機関を掲載し、チャットツールなどでも簡単に相談できます。

北海道

北海道では、ケアラーの早期発見や適切な支援をするための具体的な方法を考えるなど、ケアラー支援に積極的に取り組むことを表明。「北海道ケアラー支援条例(仮称)」を制定するために、道民から意見を募集しています。

現在は、北海道ケアラー支援有識者会議やケアラーの実態調査などを行い、現状把握に努めているようです。また啓発活動にも力を入れており、オンラインセミナーを開催したり啓発リーフレットを作成したりしています。

表面化しているケアラーの問題は氷山の一角

ケアラーやヤングケアラーは、家庭内で生じている問題のため、表面化しにくいことが最大の課題です。ケアラーが行うのは目に見えてわかるような家族の介護だけではありません。家計を支えるためのアルバイトやきょうだいの世話、アルコールや薬物・ギャンブルなどの問題を抱えるご家族の対応など、幅広い問題が背景にあります。
もし身近なところで、ケアラーやヤングケアラーの存在を知ることや、相談を受けることがあれば、支援機関や相談窓口を紹介するようにしましょう。

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