日常生活動作とは?評価方法や介護現場での考え方をチェック

生活する上で最低限必要な動作である、食事や入浴。こうした動作は「日常生活動作」と呼ばれており、介護現場では高齢者の自立度を測る尺度として用いられています。また近年は、長く自立した生活が送れるよう、要介護度の維持・軽度化を図る「介護予防」の視点も重要です。そこでこの記事では、日常生活動作とは何か、自立度を測る評価方法などについて紹介していきます。あらためて理解を深め、業務に活かしてみてくださいね。

日常生活動作の定義とは?

日常生活動作とは、生活をする上で最低限必要とされる動作のことです。介護現場では、高齢者の自立度や心身機能レベルを測る指標としても用いられています。英語表記の「ADL:Activities of Daily Living」で覚えている方も多いかもしれませんね。日常生活動作(ADL)は、次の2種類に分けられます。

基本的日常生活動作(BADL:Basic ADL)

基本的日常生活動作(BADL)とは、日常生活の基本となる動作のことです。
ベッド上での移動や寝返りなどの起居動作、トイレや車いすなどへの移乗動作、歩いて場所を移る移動動作などを指します。このほか、食事・入浴・排泄・着替え・整容といった行為が基本的日常生活動作(BADL)です。

手段的日常生活動作(IADL:Instrumental ADL)

手段的日常生活動作(IADL)は、基本的日常生活動作(BADL)の次の段階となる、より複雑な日常生活動作のことです。
スケジュール調整や金銭管理、交通機関を利用するなどの動作が含まれています。掃除や料理といった家事や、電話でのコミュニケーション、食事後の片付け、季節に合った服を選ぶことなども、手段的日常生活動作(IADL)です。

日常生活動作を評価する5つの方法

高齢者のリハビリや介護保険制度を用いる際には、日常生活動作(ADL)をどれだけ行えるか、どの程度介護を要するかを評価することが必要です。これらの評価を行う方法には、いくつかの種類があります。ここからは、介護現場でよく用いられる5つの評価方法を一覧で見ていきましょう。

バーセルインデックス(BI:Barthel Index)

食事や着替えなど、10項目の基本的日常生活動作(BADL)を評価する方法です。評価項目には、入浴や歩行、排尿なども含まれています。自立度を2~4段階に分けて評価し、100点満点中点数が高いほど自立していると見なす評価方法です。2021年度の介護報酬改定でも活用されるなど、日本でも広く使われています。

カッツインデックス(Katz Index)

入浴や着替え、食事など6項目で基本的日常生活動作(BADL)を評価する方法です。それぞれの動作を、「自立」か「介助」かに分けて、A~Gの7段階で評価します。動作を行える能力があった場合でも、本人が嫌がったときには自立と認められない点が特徴です。

ダスク21(DASC-21)

ダスク21は、地域包括ケアシステムにおける、認知症の評価表として用いられている日本で開発された方法です。厚生労働省主導の、医療や介護、生活支援などを一体的に支援する地域包括ケアシステムの実現に向け活用されています。地域包括ケアに関わる多くの職種の方が使用でき、短時間で生活機能と認知機能の自立度が評価できることも特徴です。

21項目のうち、6項目は手段的日常生活動作(IADL)の評価で、点数が高いほど自立度は低いと判断されます。各項目は1~4点で区分され、合計が31点以上の場合は認知症の可能性があります。

ロートン(Lawton)の尺度

電話の使用や買い物、金銭管理など、手段的日常生活動作(IADL)を評価する方法です。社会生活を送る中で必要な動作を、8項目で評価します。女性はすべての項目が評価対象ですが、男性は8つのうち5つの項目に絞られて評価されることが特徴です。3~5段階評価で、点数が高いほど自立していると判断されます。

老研式活動能力指標

請求書の支払いや健康についての関心、バスや電車の利用などの13項目の手段的日常生活動作(IADL)を評価する方法です。友人の家を訪問する・相談にのる・若い人に話しかけるなどの項目もあります。「はい」が1点、「いいえ」が0点で、点数が高いほど自立度が高いと見なされる評価方法です。

日常生活動作(ADL)で自立度を評価|要支援と要介護度にも影響

「日常生活動作(ADL)がどれだけ無理なく行えるか」は、自立度を測る指標です。日常生活動作(ADL)の評価によって、利用者さんが利用できる介護保険サービスも変わっていきます。

また、高齢者の自立度によって変化するのが「要介護度」です。たとえば、要支援1であればほぼ自立した生活を送れている状態ですが、要支援2から要介護1へ、要介護2へ…と、要介護度が進むにつれて自立度は低下していきます。こうした要介護度を判定する際に用いられている基準が、厚生労働省が定める「要介護認定等基準時間」です。これは、介護にどれくらいの時間(手間)がかかるかを表すもので、要介護認定を行う際の指標の1つとなっています。

介護現場での日常生活動作(ADL)の考え方とは?

介護現場では、利用者さんの現状を踏まえた適切な対応が求められます。日常生活動作を無理なく行えるなど比較的健康な方には、その状態が維持できるようなサポートが大切です。できるところは自力で行ってもらいながら、必要な場面で手助けを行いましょう。

要介護状態の利用者さんであれば、状態の悪化を遅らせるような対応が求められます。手足を無理なく動かせるレクリエーションの企画や、利用者さん同士の交流にも目を向けながら、心身ともに充実するようなサポートが大切です。

日常生活動作(ADL)の評価にもとづいたサポートには、理学療法士や作業療法士、看護師とそれぞれに専門領域があります。それぞれの専門職が担うリハビリ計画や看護計画を共有しながら、利用者さんをサポートしていきましょう。

日常生活動作(ADL)は利用者さんの自立度を測る大切な指標!

日常生活動作(ADL)は、食事や着替えなどの基本的な動作と、金銭管理や電話応対などの社会的な動作の2種類に分けられます。それぞれの動作がどの程度問題なく行えるかは、利用者さんの自立度を測るための指標の1つです。日常生活動作(ADL)について理解を深めることで、利用者さんの状態に適した対応を心がけていきましょう。

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