廃用症候群とは?リハビリのポイントや提供サービスについて知ろう

病気や骨折などによって、長期間寝たきりの状態になることで引き起こされる症状が、「廃用症候群」です。元疾患に関わらず誰にでも起こり得るもので、サルコペニアと間違われやすい症状でもありますが、明確な違いがあります。そこで今回は、廃用症候群とはどういうものかという基礎知識と、サルコペニアとの違いや廃用症候群のリハビリのポイントなどについて見ていきましょう。

廃用症候群とは?サルコペニアとの違いを理解しよう

まずは、廃用症候群とはどういうものなのか、サルコペニアとの違いについて紹介します。

廃用症候群とは?

病気や骨折などによって長期間安静にする必要があり、身体を動かさないために生じる体の障害のことです。リハビリや治療により改善すると言われていますが、重度の廃用症候群になってしまうと元の状態まで回復しないこともあるため、注意しなければなりません。

病気などによって安静にしなければならない場合は別ですが、廃用症候群に陥らないために早い段階からリハビリを始めることが重要です。

サルコペニアとの違いは?

廃用症候群と似ている症状として、「サルコペニア」があります。サルコペニアとは、加齢によって引き起こされるもので、筋肉量が低下することです。人間は40歳頃をピークに筋力が低下していくため、65歳以上の高齢者の約15%がサルコペニアに該当するという見解も。サルコペニアの症状が悪化すると、歩いたり立ち上がったりなどの基本動作がしにくくなり、転倒することも増えます。
サルコペニアの対象が筋肉だけであるのに対し、廃用症候群は筋肉のほか骨や神経、内臓、精神機能など、体全体を対象にしている点が違いと言えるでしょう。

廃用症候群の症状は多岐にわたる

これまで見てきたように、廃用症候群は、筋肉量の低下だけでなく骨や内臓、精神面などすべてに影響を及ぼします。ここでは、どういった症状があるのか見ていきましょう。

  • 筋萎縮…筋肉がやせること。
  • 関節拘縮…関節が硬くなり関節の動きが悪くなること。
  • 起立性低血圧…急に起きたり立ち上がったりすることで血圧が低下すること。めまいや吐き気、意がなくなることも。
  • 誤嚥性肺炎…唾液や食べ物が気道に入り、口の中の細菌が肺に入ることで引き起こされる肺炎のこと。睡眠中でも起こり得ます。
  • 褥瘡…いわゆる床ずれと言われるもの。同じ体勢が続くことによって、局所的に圧迫された部分の血流が悪くなり皮膚がただれたり傷になったりします。
  • うつ状態…気持ちが落ち込み、不眠や食欲不振・疲れなどの症状があらわれること。
  • 見当識障害…時間や場所・人・周囲の状況などが判断できなくなること。
  • せん妄…意識がもうろうとしたり、幻覚や幻聴が出たりすること。普段とは違う言葉遣いや行動をすることもあります。
  • 骨萎縮…骨量が減少すること。全身で起こると骨粗鬆症に該当します。
  • 心機能低下…心臓の働きが低下すること。
  • 血栓塞栓症…血栓によって血管がつまり、循環不全により臓器障害を起こすこと。
  • 圧迫性末梢神経障害…同じ体勢が続くことによって、神経が局所的に圧迫されて麻痺が起きること。
  • 逆流性食道炎…胃の内容物が逆流し、食道に炎症を起こすこと。
  • 尿路結石…腎臓や膀胱・尿道に結石ができること。
  • 尿路感染症…尿路内に細菌が入り、膀胱や腎盂などに炎症を引き起こすこと。

このうち一つだけ症状が出る場合もあれば、複数の症状を発症するケースもあります。

介護施設で求められる廃用症候群への提供サービスとは?

介護施設で行える廃用症候群に対する提供サービスは、主にリハビリテーションです。病院でのリハビリテーション料は診療報酬のガイドラインに沿って、実施期間は入院や外来に関係なく定められています

廃用症候群リハビリテーションの標準的算定日数は、診断がついた日から120日です。病名によって決められており、この期限を超える場合には病院でのリハビリテーションで行えなくなります。介護保険を利用できる方は、介護保険でのリハビリに移行する場合も。

次に、介護施設で求められる廃用症候群への提供サービスについて見ていきましょう。

運動やリハビリの機会を作る

安静が必要なときは、無理な運動やリハビリテーションは控えなければなりません。しかし、医師の判断のもと回復期に該当する時期には、積極的に運動やリハビリテーションの機会を作ることをおすすめします。

自力でできることを増やす

少しでも身体を動かす習慣を身につけるためにも、自分でできることは自分でしてもらうというのも良いでしょう。無理をさせる必要はありませんが、ある程度は利用者さん本人に動いてもらい、周りでサポートするという体制をとってください。

医師に相談する

重度の廃用症候群となると、薬物治療をした方が良いケースもあります。早めに医師に相談し診察を受け、適切な処置を行いましょう。重症化させないためにも、日頃から予防しておくことが重要です。

廃用症候群のリハビリを成功させるポイントとは?

廃用症候群のリハビリテーションは、利用者さんにとっては苦痛を感じる場合も。介護スタッフが心がけたい廃用症候群のリハビリテーションを成功させるためのポイントを紹介します。

精神面のサポート

終わりが見えないリハビリテーションは、利用者さんにとって辛いものです。いつまでも終わりが見えないことによって心が折れてしまい、リハビリテーションに前向きに取り組めない利用者さんもいるかもしれません。リハビリテーションを行ったとしても、時間が過ぎるだけで、成果があらわれにくいということもあるでしょう。

こんなときは、リハビリテーションを行う目的を説明したり、ちょっとした変化などを伝えたりすると良いかもしれません。利用者さんのモチベーションがアップするように心がけましょう

体調管理や環境を整えることに努める

リハビリテーションには体力を使います。寝たきりで体力が落ちているため、食事や睡眠時間・体調の変化などをしっかり確認しましょう。リハビリテーションできる状態かを確認することも大切です。体調が良くない日は無理をせず、リハビリテーションを休むように提案しましょう

利用者さんが身近なことを自分でできるようにすることも検討してみると良いかもしれません。あると便利なところに手すりを設けたり、寝返りをしやすいように寝具を変えたりなど環境を整えてみましょう。

日頃から利用者さんの様子を確認し会話を増やそう

介護スタッフは廃用症候群を予防する観点から、利用者さんの様子や変化を確認することが特に重要と言えるでしょう。
廃用症候群にならないように、医師に確認をとってから早期にリハビリテーションを始めることをおすすめします。また、会話を増やすことも大切です。身体は動かせなくとも会話によって脳が刺激され、精神面の安定も期待できるでしょう。

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