高齢者施設はエアコン設定温度に注意を!夏は何度が適温?【夜間編】

気温が高くなる季節に、室内で快適に過ごすためには、エアコンが欠かせません。近年は室内であっても熱中症の危険があるため、夏は上手に活用したいところ。とくに、高齢者の熱中症は夜間に起こりやすいため、介護施設などでは1日を通して注意が必要です。そこでこの記事では、高齢者施設の夜間のエアコン設定温度や、安全に過ごす対策などを解説。暑い季節も、利用者さんが安全で快適に過ごせる方法について紹介していきます。

高齢者は夏の夜にエアコンが欠かせない!その理由とは

エアコンの使用が欠かせない、日本の夏。しかし、高齢者の中には「エアコンは苦手だからできるだけつけたくない」という方も少なくありません。ご本人の気持ちを大切にしたいところですが、安易に容認してしまうとかえって危険なこともあります。ここではまず、夏のエアコンの重要性について見ていきましょう。

高齢者に多い!夜間熱中症の危険性

熱中症とは、高温多湿な環境に長い時間いたために、体温調整機能が働かなくなり、体に熱がこもった状態のことです。日差しが厳しい夏は、とくに熱中症のリスクが高まります。また、日差しがない夜であってもそのリスクが軽減することはありません。こうした原因には、主に次の2つが関係しています。

  1. 日中に天井や壁にたくわえられた熱が夜に放射熱となり室温が上がる
  2. 寝ている間は水分補給ができず、排泄だけになるため脱水状態に陥りやすい

日中の熱中症であれば、めまいやだるさなどの、初期症状の時点で気づけることもあります。しかし、寝ている最中はこうした変化があったとしても、なかなか気づけないもの。気づいたときには重症化しているケースもあるようです。

このように、夏は夜間であっても熱中症のリスクは高い状態が続きます。高齢者の多い介護施設などでは、エアコンを適切な設定温度で活用し、利用者さんを熱中症から守りましょう。

暑さを感じにくくなっている高齢者も多い

人は暑さを感じると、脳や皮膚センサーなどを働かせて、体温を調節します。しかし、高齢者は皮膚センサー機能自体が低下することから、暑さを感じにくくなるのです。そのため、本人がどんなに大丈夫と思っていても、実際にはかなり蒸し暑い部屋で過ごしていることも少なくありません。

高齢者自身がエアコンを適切な設定温度で活用することが推奨される一方で、身体機能の低下がそれを難しくしているのです。こうしたことから、近年は室温が上がると自動的に冷房運転をスタートさせるような見守り機器なども発売されています。

室温は26℃以下に!夏の夜を快適に過ごせる環境とは

夜間熱中症を防ぎ、夏の夜を快適に過ごすためには、次のような環境が推奨されています。

  • 室温:26℃以下
  • 湿度:50%~60%

環境省が推進するクールビズと混同して「室温は28℃が適切なのでは?」という声も耳にしますが、実はこれは間違い。クールビズとは、室温28℃で快適に過ごせる軽装を推奨している活動を指します。つまり、エアコンの設定温度を28℃にするように、という意味ではないのです。

さらに、たとえエアコンの設温度を28℃に設定していたとしても、室温が28℃になるとは限りません。そのため介護施設では、高齢者の居室などのエアコン設定温度を26℃以下にすることで、夜間も適温を保つことが大切です。温度計や湿度計などを設置して、こまめに室温を確認しましょう。

また、気温と湿度、輻射熱(ふくしゃねつ)をとり入れた「暑さ指数(WBGT)」と呼ばれる指標もあります。この指標は、熱中症の危険性を判断する数値を示す「熱中症計」で測れるものもあるため、こうした機器も上手に活用しましょう。

暑い夜も高齢者施設で安全に過ごす対策とは

ここからは、暑い夜であっても高齢者が安全に過ごすための対策について見ていきましょう。

エアコンの風向きなどにも工夫を

エアコンの風が、直接体にあたることを嫌がる高齢者は多いもの。そのため、エアコンを調節するときには設定温度だけでなく、風向きにも一工夫を加えましょう。できるだけ風向きを水平に固定すると、高齢者の体に直接風があたらず、室温を下げられます。

また、扇風機やサーキュレーターなどを使って、高齢者の部屋の空気を循環させるのも工夫の1つ。エアコンの風量を強くすると、設定温度を変えなくても体感温度が下がるといいます。高齢者の「エアコンが苦手」という意識は、設定温度や風向きなどを工夫することで、できるだけ軽減していきましょう。

起きた後にコップ1杯の水分補給

寝ている最中は、コップ1杯ほどの汗をかくと言われています。そのため、起きた後には、水分補給をすることが大切です。コップ1杯を目安に、水分をしっかり摂るような習慣を作りましょう。また、枕元にペットボトルなどを用意しておくと、こまめな水分補給が行えます。

一方で、利用者さんの中には夜間のトイレが気になり、水分をできるだけ控えたい方もいるかもしれません。こうした方は、1日を通して必要な水分量(目安:1.2リットル/日)を摂るようにし、夕方以降は控えめにするなどの調整を行いましょう。

夜間熱中症の症状がみられたときの対処法とは

万が一、夜間に熱中症が疑われる症状がみられたときには、まずは意識の有無を確認します。意識がある場合は、エアコンをつけて部屋の温度を下げましょう。その後、冷たいタオルや氷などを使い、体温を下げていきます。首筋やわきの下、太もものつけ根など、太い静脈が表面近くに通っているところを冷やすと効率的です。水や経口補水液、スポーツドリンクなどを飲ませ、脱水が進行しないようにしましょう。

一方、意識がない場合や自力で水が飲めないときには、危険な状態です。すぐに救急車を呼び、医療機関に搬送してもらいましょう。

高齢者のエアコン設定温度は26℃以下!夜間も注意を

暑い時期でも高齢者が安全に夜間の時間を過ごすためには、エアコンの上手な活用が欠かせません。設定温度は26℃以下を目安に、過ごしやすい室温を保ちましょう。また、高齢者の中には、エアコンが苦手な方も少なくありません。設定温度の調整や風向きなどに気を配りながら、できるだけ苦手意識を

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