【介護施設の食中毒】食中毒事故の原因とは?細菌やウイルスに注意!

じめじめとした梅雨とともに気温が上がってくると、気になるのが食中毒です。高齢者は免疫力低下のため、細菌やウイルスに対する抵抗力が落ちている方が少なくありません。介護施設内で万全の予防対策を行っていても、ちょっとした不注意で食中毒が引き起こされることも…。今回は、介護施設で多い食中毒事例、食中毒の原因となる細菌やウイルスなどを知って、食中毒に対する知識を深めましょう。

介護施設で多い食中毒事例とは?原因は細菌とウイルス

そもそも食中毒とは、細菌やウイルスに汚染された食べ物を食べることで、下痢や腹痛、嘔吐などを引き起こす病気のことです。食中毒の程度が低ければ、食あたりなどと言われることもあります。

食中毒は、6月~9月頃などの暑い季節にのみ気をつければ良いと勘違いしている方もいますが、実は1年中注意が必要です。6月~9月頃は細菌性の食中毒、11月~3月頃はウイルス性の食中毒が発生しやすくなります。

細菌やウイルス以外にも、毒きのこなどの自然毒や、アニサキスといった寄生虫が原因の食中毒も。介護施設での食中毒では、どういった細菌やウイルスが原因となっているのか、具体的な食中毒事例について見ていきましょう。

介護施設で多い食中毒の原因は?

厚生労働省が発表している過去の食中毒事件一覧を参考にすると、2021年の介護施設(老人ホームの給食施設)での食中毒事例で最も多かった原因はウエルシュ菌で、2番目に多かったのはカンピロバクターです。

その他にもノロウイルスやぶどう球菌、サルモネラ菌が原因となる食中毒事例がありました。

介護施設などでの食中毒事例とは

実際にはどういった事例があったのでしょうか?一部の事例を簡単に紹介します。

<ウエルシュ菌>

煮物料理を室温で冷まし放置。再び加熱したものの菌が増殖したために食中毒が発生。

<カンピロバクター>

鶏肉の近くにサンドイッチ用の野菜を放置。鶏肉に付着していたカンピロバクターが野菜に付着し食中毒が発生。

<ノロウイルス>

介護施設Aにて嘔吐下痢症の患者さんが多発。ノロウイルスが原因であることが分かったものの、食事による食中毒ではなく、人から人の感染が疑われました。その後施設Aの他階にも感染者が拡大し、隣接した介護施設Bと搬送先である病院Cでも発症。集団感染となりました。

介護施設などで食中毒の感染者が発生したら、早期に対応しなければ感染が広がる可能性があります。利用者さんの健康状態をこまめに把握して、ちょっとした変化でも介護スタッフ間で共有しておくと良いでしょう。

食中毒の原因となる代表的な細菌

ここからは、食中毒の原因となる代表的な細菌の特徴を紹介します。

カンピロバクター

他の細菌と比べると、少ない菌数でも発症すると言われている細菌です。鶏や牛などの家畜やペット、野鳥などが保菌しており、加熱不十分の鶏肉から感染する事例がよく見られます。食材を十分に加熱すれば死滅します。

症状は、下痢や腹痛・嘔吐・頭痛・発熱・倦怠感などで、潜伏期間は1日から7日間です。まれに感染してから数週間後に手足の麻痺や顔面神経麻痺などを引き起こす「ギラン・バレー症候群」を発症するケースも。

ウエルシュ菌

人間や動物の腸管、土、水中などに存在する菌の一種です。酸素を嫌う嫌気性菌であることが特徴。肉や魚、野菜などを使った煮込み料理が感染源となることが多いという特徴があります。カレーやシチューなどの煮物料理を行った際に、鍋の中が無酸素状態となり、ウエルシュ菌が増殖するためです。

症状は腹痛や下痢で、潜伏期間は約6時間~18時間。比較的症状は軽いことが多いです。

腸管出血性大腸菌(O157)

もともとは家畜や人間の腸内に存在する大腸菌の1つ。ただし、下痢や合併症を起こすことがあるため、病原大腸菌と言われています。病原大腸菌の中でも、毒素を作り、出血を伴う腸炎などを引き起こすため、腸管出血性大腸菌O157に分類。

肉や野菜から感染しますが、加熱や消毒薬によって死滅する菌です。75℃で1分以上の加熱をしましょう。

基本的には食べ物からの感染ですが、感染者の糞便に含まれる大腸菌から感染することもあるため、注意してください。症状は下痢や腹痛、血便、嘔吐など、潜伏期間は2日~14日です。

黄色ブドウ球菌

人間ののどや鼻の中にも存在する菌で、にきびの原因となることもあります。菌自体は熱に弱いのですが、毒素は100℃で20分加熱を行っても、分解がなされません。寿司や肉、卵などさまざまな食品が原因になります。

症状は嘔吐や腹痛、下痢などで、潜伏期間は30分~6時間です。手洗いや消毒はもちろんのこと、手指に切り傷などがある方は、食品に直接触れたり調理したりしないようにしましょう。

サルモネラ菌

人間や牛、豚、鶏などの腸内、河川などに存在する細菌の1種で、犬や猫などのペットから感染することもあります。一般的には、生卵や食肉からの感染が有名です。乾燥に強く、少量の菌でも発症する特徴があります。

主な症状は、腹痛や発熱、下痢などで、潜伏期間は6時間~72時間です。加熱調理で感染を防げます。

食中毒の原因となる代表的なウイルス

最後に、食中毒の原因となる代表的なウイルスについて見ていきましょう。

ノロウイルス

全国の食中毒発生事例の約半分は、ノロウイルスが原因となっています。寒くなる11月~2月に患者数が増え、牡蠣などの二枚貝が原因になることが多いです。85~90℃で1分30秒以上加熱すれば感染力を失うため、十分な加熱をしましょう。

ノロウイルスは、感染者の排泄物に含まれるウイルスが手指につき、そこから食品に二次汚染することもあります。手洗いや消毒の徹底も必要です。主な症状は嘔吐や下痢、腹痛、微熱などで、潜伏期間は24時間~48時間

E型肝炎ウイルス

衛生状態の悪い地域でよく見られるウイルスで、牛や豚、鹿、猪などが原因になることもあります。海外旅行で感染するケースもあるため、水や野菜、果物などを生で食べることはできるだけ控えたほうが良いでしょう。

感染者の排泄物に含まれるウイルスが手指に付着し、食品を通じて感染するケースもあるため、注意してください。

主な症状は、発熱や嘔吐・倦怠感・黄疸などで潜伏期間は15日~50日です。十分に加熱すれば感染力が失われます。

食中毒の種類と特徴を知って適切に対処しよう

食中毒の原因となる、ほとんどの細菌・ウイルスは熱に弱い性質を持ちますが、中には熱に強く酸素がなくても生きていけるものも。ちょっとした不注意が介護施設で食中毒を発生させる原因となることもあるため、気を抜かず万全の体制で対策をたてましょう。また、万一食中毒が発生した場合の対応をフロー化して、定期的に模擬訓練することもおすすめです。

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