アンガーマネジメントとは?介護職のための「怒り」のコントロール術

介護という仕事を通じて、さまざまな人間関係が生まれます。職場の同僚はもちろん、利用者さんやその家族などとのコミュニケーションによってイライラしてしまうこともあるかもしれません。だからといって、感情を爆発させた言動をしていると気まずくなったり仕事が滞ったりすることもあるでしょう。それだけで済めば良いですが、感情にまかせた言動が、高齢者虐待に該当するケースもあります。そこで今回は、アンガーマネジメントと介護の関係について学んでいきましょう。

アンガーマネジメントとは?

アンガーマネジメントとは、怒りの感情との折り合いをつけるための心理トレーニングのことです。1970年代にアメリカで誕生し、犯罪者の矯正プログラムとして用いられてきましたが、現在では幅広い分野で活用されています。

その背景には、企業がパワハラなどのハラスメント防止を考え始めたことも一因となっているようです。アンガーマネジメントを学び、感情に任せた言動がなくなれば、良好な人間関係を築きやすくなります。また、仕事も円滑に進み、全体のモチベーションアップにもつながるでしょう。

最近では、教育現場や企業、介護施設などでもアンガーマネジメントの研修を行う機会が増えているようです。

なぜアンガーマネジメントを学ぶ必要があるの?

アンガーマネジメントを学ぶ大きな目的は、良好な人間関係を築き、仕事やコミュニケーションを円滑行うことです。しかし、介護現場のアンガーマネジメントには、他にも理由があります。それは、利用者さんとスタッフの関係を改善し、高齢者への虐待防止をはかるためです。

近年、介護スタッフによる利用者さんへの虐待件数が増加しています。その背景を受け、2006年には「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待防止法)」が施行されました。

介護現場では、人材不足で休養が十分ではないために、イライラしてしまうこともあるでしょう。また、忙しいなかで認知症の利用者さんから暴言を言われてしまうなど、どうしてもイライラすることもあるでしょう。

人間だからこそ、感情があって手厚い介護ができるものです。しかし、精神的に疲れているときは、気持ちに余裕がなくなってしまうこともあるはず。利用者さんの言動が仕方のないことだと分かっていても、感情が爆発しやすくなり、結果的に高齢者への虐待につながる原因になってしまう可能性も…。他の企業や教育現場でも取り入れられているように、介護現場でもアンガーマネジメントを学ぶ必要があるのです。

どんなシーンでイライラしやすい?

介護現場でイライラしてしまいやすいシーンには、どのようなものがあるのでしょうか?具体例を紹介します。

  • 何度も同じ話をされイライラした
  • 時間がないのに、こちらの言葉を聞いてくれず、従ってくれない
  • 利用者さんに他のスタッフと比べられた
  • 認知症なのは理解しているが、暴言を言われた

利用者さんがどんな状態なのかは、介護スタッフは十分把握しているはず。ですが、介護スタッフも人間。心身の状態が良くないとイライラしてしまうことは当たり前です。利用者さんに感情をぶつけないためにも、アンガーマネジメントに取り組んでみましょう。

次では、今からできるアンガーマネジメント術について紹介します。

実践編!今からできるアンガーマネジメント

アンガーマネジメントで大切なことは、怒りをコントロールすること。怒りをコントロールするには、衝動・思考・行動のコントロールが必要です。

衝動のコントロール

怒りを爆発させたい衝動を止めるために行うもので、一般的には「6秒ルール」といいます。怒りを感じた際に6秒我慢することで理性が働き、怒りの衝動を抑えられるでしょう。

思考のコントロール

人間はつい、「~すべき」と考えてしまい、相手に自分の考えを押しつけてしまうケースがあります。人によって価値観が違うことを再認識し、「本当に怒る必要があるのか」について考えましょう

行動のコントロール

思考のコントロールをしてもどうしても許せないと感じた場合に行います。怒りが「変えられるのか・変えられないのか」、そして「重要なのか・重要ではないのか」で考えましょう。

「重要ではなく変えられないこと」であれば、その事象に怒りを感じても意味がありません。「こういったこともあるのか」と受け入れ、怒りの感情を手放す必要があるでしょう。

「重要かつ変えられること」なのであれば改善できるように取り組み、「重要で変えられないこと」であれば、他の方法を模索します。「重要ではないが変えられること」であれば、時間や余力がある際に、改善に向かうよう取り組みましょう。

以上のように、客観的に自分の感情と向き合うことで、怒りの感情を上手にコントロールできるようになるのです。

利用者さんと自分の心を守るために

アンガーマネジメントは、利用者さんと自分の心を守るためにとても大切なトレーニングです。介護現場ではイライラしてしまうことが頻繁に起こるかもしれませんが、アンガーマネジメントを上手に用いて、感情にまかせた言動とならないように気をつけましょう。また、介護施設でアンガーマネジメントの研修などを行うのもおすすめです。

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