認定特定行為業務従事者になるには?できることや取得メリットも解説

認定特定行為業務従事者とは、利用者さんに喀痰吸引などの医療行為が行える介護職のこと。それぞれの現状に合わせた手続きをとれば、未経験からでも目指すことが可能です。この記事では、認定特定行為業務従事者になるにはどうすれば良いか、またできることや取得するメリットについて解説していきます。認定特定行為業務従事者を目指したい方はぜひご一読ください。

認定特定行為業務従事者とは?できることも解説

認定特定行為業務従事者とは、一定の条件のもとで一部の医療行為が行える介護職のことです。介護施設で行われる医療行為は医師や看護師が行うのが原則ですが、体温・血圧測定、服薬管理など一部例外的に介護職が行えるものがあります。認定特定行為業務従事者になると、さらに次のような医療行為が行えるため、提供できるサービスの幅を増やすことが可能です。

喀痰の吸引

喀痰(かくたん)の吸引は、気管に溜まった「たん」を、吸引装置を使って体外に吸い出す医療行為です。嚥下機能の低下などにより自力で喀痰を排出できない利用者さんには、定期的に喀痰の吸引を行うことで、誤嚥や気管閉塞などのリスクを軽減していきます。通常は看護師などが行う医療行為ですが、認定特定行為業務従事者になると、医師の指示のもと喀痰の吸引を行うことが可能です。口や鼻から行う吸引はもちろん、気管カニューレを使用する利用者さんの喀痰吸引も行えるようになる方もいます。

経管栄養(胃ろう・腸ろうなど)

経管栄養とは、口から食べ物を摂取できない、または十分な食事量が摂れない方が胃や小腸などから栄養剤を注入し、栄養状態を維持・改善する方法です。脳梗塞による嚥下障害や誤嚥性肺炎を繰り返す方など、何らかの原因で口から食べ物が摂取できないときに行うことが多いでしょう。認定特定行為業務従事者になると、胃や小腸に直接栄養を届ける「経管栄養」などを行うことができます。

▽介護職が行える医療行為についてくわしく知りたい方は、こちらの記事もチェック!

認定特定行為業務従事者になるには?

認定特定行為業務従事者になるには、次の2つの方法があります。ここでは、それぞれの状況ごとに、認定特定行為業務従事者になるにはどうすれば良いかを確認していきましょう。

これから介護福祉士になる方

養成施設などに通って介護福祉士を目指している方が、認定特定行為業務従事者になるには、次の段階を経ていきましょう。

  1. 養成施設に入学し、養成課程の中で認定特定行為業務従事者に必要な知識を身につけていく。
  2. 卒業後「介護福祉士」の国家試験を受験。合格したら、介護福祉士としての登録を行う(「介護福祉士登録証」が交付される)。
  3. 介護事業所などで就業開始。養成課程において「実地研修」を修了していない場合は、同研修を受講する(修了後「修了証明書証」が交付される)。
  4. 実地研修を終了した後、「介護福祉士登録証」の変更を行う。以降、医師の指示のもと、看護師などと連携してたんの吸引などの提供が行える。

まずは、介護福祉士の国家試験に合格し、就業してから認定特定行為業務従事者になるというのが、この場合のステップです。

すでに介護業務に携わっている方

すでに介護職として事業所や施設で就業している方が、認定特定行為業務従事者になるには、次の段階を経ていきましょう。

  1. 各都道府県が認める登録研修機関にて「喀痰吸引等研修」を受講する(終了後「修了証明証」が交付される)。
  2. 都道府県に「修了証明証」を添付し、認定特定行為業務従事者認定証の申請を行う。
  3. 研修終了が都道府県で確認されると、認定特定行為業務従事者認定証が交付される。
  4. 医師の指示のもと、看護師などと連携してたんの吸引などの提供が行える。

すでに介護職に就いている方は、登録研修機関で研修を受けた後、都道府県から認定を受け認定特定行為業務従事者になるというのが一般的です。ただし、すでに一定の要件のもとでたんの吸引などを提供している方は、研修を受けずに都道府県への手続きのみで認定証が交付されます。経過措置対象者として通知が来ている方は、こちらの流れに沿いましょう。

出典:厚生労働省「平成24年4月から、介護職員等による喀痰吸引等(たんの吸引・経管栄養)についての制度がはじまります。」

介護職が認定特定行為業務従事者になるための喀痰吸引等研修とは

介護職として就業している方が認定特定行為業務従事者になるには、「喀痰吸引等研修」の受講が必要です(経過措置対象者を除く)。同研修は3種類あり、それぞれ処置を行える相手や実施できる医療行為が異なるため、自分に合った研修を選びましょう。

なお、どの研修も受講資格で学歴や経験などは問われません。未経験からも受講可能ですが、研修機関によっては特定の資格を有していれば研修の一部が免除されることもあります。こちらの詳細は、研修を実施する機関にお問い合わせください。

第1号研修

第1号研修では、不特定多数の方に喀痰吸引などの医療行為が行える基本研修と実地研修が行われます。基本研修では講義を合計50時間受けた後、知識確認のための筆記試験を受験して、9割以上の得点で合格することが必要です。また、各医療行為の治療演習も行われ、治療技術が十分に身についた方から勤務先で実地研修を行っていきます。

処置対象不特定多数
基本研修の期間8~10日ほど
受講費用10~20万円ほど
研修内容講義50時間+各医療行為の治療演習+実地研修
筆記試験の合否基準正解率9割以上で合格

第2号研修

第2号研修でも、不特定多数の方に喀痰吸引などの医療行為が行える基本・実地研修が行われます。ただし、第2号研修では「気管カニューレ内吸引」と「経鼻経管栄養」についての学習は行われません。そのため、これらの治療が必要な利用者さんがいない場合は、第2号研修を選ぶと良いでしょう。

処置対象不特定多数
基本研修の期間8~10日ほど
受講費用10~20万円ほど
研修内容講義50時間+各医療行為(※1)の治療演習+実地研修
筆記試験の合否基準正解率9割以上で合格

※1 口腔内・鼻腔内吸引と経管栄養(胃ろう・腸ろう)のみ

第3号研修

第3号研修は、重度障がい者など特定の方にだけ喀痰吸引などの医療行為が行える基本研修と実地研修が行われます。そのため、カリキュラム自体が第1号・第2号研修とは異なる点に注意しましょう。

処置対象重度障がい者など特定の方
基本研修の期間2日ほど
受講費用5万円ほど
研修内容講義および演習9時間(※1)+実地研修(※2)
筆記試験の合否基準正解率9割以上で合格

※1 重度訪問介護従事者養成研修と併せて実施する場合は20.5時間
※2 特定の方に対して必要な行為のみ実地研修を行う

認定特定行為業務従事者になるメリット

ここからは、認定特定行為業務従事者になるメリットについて見ていきましょう。

介護職としての仕事の幅が広がる

認定特定行為業務従事者として働く方は、まだまだ少ないのが現状です。一方で、たんの吸引などが必要な利用者さんは少なくないため、同研修を修了していると仕事の幅が広がりやすいでしょう。認定特定行為業務従事者となりできることが増えれば、さらに利用者さんの役に立つことができます。

現場ですぐに役立つ技術が得られる

喀痰吸引等研修では、人体模型を使ってたんの吸引などの治療演習が行われます。看護師からカテーテルの扱い方などの指導が受けられ、さらに実地研修も積むため、実践的な技術を身につけることができるでしょう。このように介護現場ですぐに役立てられる技術が得られることも、認定特定行為業務従事者になるメリットです。

認定特定行為業務従事者になるには現状に合った方法を選ぶ!できることを増やそう

介護職ながら、喀痰吸引などの医療行為が行える認定特定行為業務従事者は、現場でも求められている存在です。認定特定行為業務従事者になるには、これから介護福祉士になる方とすでに介護職として就業している方で方法が違うため、自分に合った手続きをとりましょう。認定特定行為業務従事者となり、できることをさらに増やしてみてはいかがでしょうか。

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