介護記録の開示義務はどこまで?遺族からの開示請求への対応についても解説

高齢化が進むにつれて介護サービスの利用者数も増加傾向にあり、それに伴って増えつつある介護施設での事故やトラブル。発生時には、介護内容や利用者さん本人の当時の状況を細かく記載した介護記録が開示請求されることも多いです。そこで本記事では、介護職が知っておくべき介護記録の開示義務について解説。日常的な業務のひとつである介護記録が万が一の事故の際には重大な証拠となり得ることについて、詳しくお伝えします。

介護記録とは

介護記録とは、介護スタッフが提供した介護サービスの内容や利用者さんの日々の健康状態、活動状況などの記録です。ただ、事業所によって呼び名はさまざまあります。また、フェースシート・アセスメントシート・介護経過表・ケアプランといったいくつかの資料を総称して「介護記録」と呼ばれることも多いです。

介護記録の作成・保管は介護保険法によって義務化されており、デイサービスや介護施設などすべての介護サービス提供者が必ず行わなければならない業務のひとつです。保管期間は厚生労働省令によって「介護保険サービスの提供終了後、2年間」と定められています。ただ、自治体によっては5年間保管を義務化しているところも多いため、注意が必要です。

介護記録を残す目的としては、

  • スタッフ間での情報共有のため
  • 利用者さん一人ひとりに最適なケアプランを作成するため
  • 利用者さんの家族との情報共有のため
  • 介護事故発生時の証拠保全のため

などが挙げられます。日々の業務中はもちろん、重大な事故やトラブルが発生したときにも必ず見返すことになるため、利用者さんやその家族、職員にとっても重要な資料です。
ただ、介護記録の作成や保管は重要な業務のひとつだからこそ、介護職の業務負担となりやすい側面も。そのため、最近では手書きでの作成だけでなく、専用ソフトなどを活用して電子化する事業所も多いようです。

介護記録はどんなときに開示請求される?

介護記録は個人情報のため、基本的には公開されることはありません。しかし、以下のようなケースでは開示請求されることがあります。

  • 介護施設での事故やトラブルが疑われる場合
  • 遺産分割協議で相続人が故人へ行っていた介護の程度を確認する必要がある場合

普段、利用者さんの日々の経過観察のために活用されることが多い介護記録ですが、トラブル発生時には重要な証拠として開示義務のある資料です。特に、介護記録の当事者である利用者さんが亡くなられた後は、故人に代わって事実を証明する役割を担うこともあります。

介護記録の開示義務はどこまで?

介護記録の開示義務について、以下にまとめています。介護保険法などの法律が絡む内容なので、しっかりと確認しておきましょう。

利用者さん本人は開示請求ができる

介護記録の当事者である利用者さん本人は、自ら介護記録の開示請求が可能です。ただし、本人の心身や財産に危害が及ぶ、または第三者の利益を害する可能性のある場合には開示請求が却下されることもあります。

なお、2022年度から個人情報保護法が改正されました。その影響で、介護記録の開示義務についても以下のような変更が実施されています。

  • 第三者に提供された介護記録についても開示請求できる
  • 開示方法について紙だけでなくデジタルでの交付も本人が指示できるようになる
  • 6ヶ月以内に消去する短期保存データについても開示や利用停止ができる

法改正の内容を一言でまとめると、本人が介護記録を開示請求できる範囲や開示方法の選択肢が以前よりも広がったことになります。さらに、個人情報を適切に取り扱わなかった場合の罰則も厳罰化されることに。この法改正によって、介護施設側の介護記録に対する開示義務はますます大きくなるでしょう。

条件を満たせば遺族も開示請求ができる

基本的に、介護記録は住所や病歴など重要な個人情報が含まれているため、たとえ本人の家族や親族であっても開示義務の範囲に含まれません。ただし、本人が亡くなっている場合には、条件を満たすことで遺族も介護記録の開示請求が可能です。開示請求できる遺族の範囲は、厚生労働省令によって「原則、本人の配偶者や子、父母、およびこれに準ずるもの」と定められています。

この規定によると、利用者さん本人の孫世代は開示義務の範囲に含まれません。しかし、その親、つまり利用者さんの子がすでに亡くなっている場合には、開示可能な「これに準ずるもの」として、開示請求が認められるケースもあります。

重大な介護事故の場合には証拠保全の対象となることも

仮に、重大な介護事故が発生した場合、その状況証拠となり得る介護記録の重要性があまりにも高くなるため、「証拠保全」という措置が取られることもあります。この場合、遺族からの開示請求はありません。その代わり、遺族から証拠保全の申立を受けた裁判所からの証拠保全の決定通達が届くことになります。

証拠保全とは、証拠となる文書や資料が改ざんや破棄される恐れがあるときに実施される、民事訴訟法上の手続きのことです。証拠保全の対象となることが決まると、裁判官や裁判所書記官、弁護士が現地に赴き、対象となる文書のチェックを行います。

介護記録が証拠保全の対象となった場合、介護事業所側はこの決定に抵抗せず、従うことになります。ただし、介護事故発生時の対応について不慣れな事業所が多いのが実態で、証拠保全という手続きについても理解できていない介護職は少なくありません。それどころか、介護記録の開示請求についても適切に対応できないことが多々あるようです。介護事故の際にはスムーズに事態を収束させることが最優先。介護記録の取り扱いや開示義務について、施設内でマニュアル化しておくと良いでしょう。

介護記録の開示請求は増えている

年々進行する高齢化の影響もあり、介護事故は増加傾向にあります。それに伴い、介護記録の重要性もますます高まっていくことでしょう。そのため、介護職にとって開示義務についての知識を身につけておくことは必須事項です。利用者さん本人や遺族から開示請求があった際に正しい対応ができるよう、今のうちから勉強しておきましょう。

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