看取り介護加算の算定要件は?特養・グループホームなど事業者別に解説

施設で看取りを行ったときに適応される「看取り介護加算」。施設の種類により算定要件が異なるため、理解するのが難しいと思っている方も多いことでしょう。今回は、看取り介護加算について詳しく解説し、施設の種類別に算定要件や取得できる単位数をまとめました。今後も需要が高まることが予想される施設での看取り。看取り介護加算について心得ておきたい方は、ぜひ一読ください。

看取り介護加算とは

看取り介護加算は、2006年に従来制定されていた介護報酬加算制度に、新たに加えられました。医師より回復の見込みがないと判断された終末期の利用者さんに対し、身体と精神面、両方の苦痛を緩和するケアを実施する事業所に適応されます。

この加算は、算定要件を満たした特別養護老人ホームや特定施設入居者生活介護、グループホームなどに限られることが特徴です。似たような加算にターミナルケア加算がありますが、「医療的ケアがあるかないか」が違う点。看護師がいて、痰の吸引などを実施する介護老人保健施設は対象にはなりません。

2021年度の介護報酬改定による変更点

介護看取り加算は、2021年度に行われた介護報酬改定により、主に以下の3つの部分が変更されました。

  • 看取り対応についてのガイドラインの設定
  • 利用者さんが亡くなる45日前から適応可能
  • 夜間の介護スタッフの配置に対する評価

以前は利用者さんが亡くなる30日前から算定可能でしたが、45日前に延長されました。また、看取りに携わるケアチーム(医師や看護師、生活相談員など)は、利用者さんとご家族と適宜話し合いの場を設けるようガイドラインで設定。話した内容は文書で記録し、残すことも義務付けられています。さらに、看取りが近いとされる時期に、夜勤もしくは宿直で看護師を配置する事業所は、その対応が評価され加算を上乗せすることになりました。施設で余生を過ごす利用者さんがより良く生活できること、事業所の看取りへの手厚い対応を評価することが盛り込まれた改定となっています。

看取り介護加算の種類

看取り介護加算は、ⅠとⅡの2種類があります。看取り介護加算Ⅰの要件は以下の通りです。

  • 病院または診療所、当該施設、訪問看護ステーションのいずれかの看護師と連携し、24時間連絡可能な体制が取れている
  • 看取りに関する指針を定め、施設に入所する際は利用者さんとご家族にその指針を説明し同意を得ている
  • 定めた看取りに関する指針は、医師や看護師、介護スタッフ、ケアマネジャー、生活相談員などが適宜見直しを行っている
  • 看取りに関する職員研修を実施している
  • 厚生労働省が定めた「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に沿った内容で取り組みを行っている
  • 看取りケアは、個室や静養室などプライバシーが確保できる場所で行い、利用者さん本人だけでなく、ご家族やほかの利用者さんに配慮する

看取り介護加算Ⅱは上記Ⅰの要件をすべて満たしたうえ、複数の医師が配置されている、もしくは協力関係にある医師が24時間対応可能であることが追加要件となっています。

看取り介護加算が対象になる事業所

看取り介護加算の対象になる事業者は以下の通りです。

  • 特別養護老人ホーム
  • 特定施設入居者生活介護【有料老人ホーム、ケアハウス(軽費老人ホーム)、養護老人ホーム】
  • グループホーム

特別養護老人ホームと特定施設入居者生活介護は、地域密着型施設も含みます。また、看取り介護加算Ⅱを算定できるのは、特別養護老人ホームと一部の特定施設入居者生活介護であることも押さえておきましょう。

【事業者別】看取り介護加算の算定要件と単位数一覧

ここからは、看取り介護加算の算定要件と単位数を事業所別にチェックしていきます。

特別養護老人ホームの算定要件と単位数一覧

特別養護老人ホームの算定要件と取得できる単位数は以下の通りです。

加算の種類要件
看取り介護加算Ⅰ・Ⅰの要件をすべて満たしている
看取り介護加算Ⅱ・Ⅰの要件をすべて満たしている ・複数の医師を配置している、もしくは24時間体制で医師と連携が取れるように体制を整えている
算定できる期間看取り介護加算Ⅰ看取り介護加算Ⅱ
亡くなる31日~45日前72単位/日72単位/日
亡くなる4日~30日前144単位/日144単位/日
亡くなる前日、前々日680単位/日780単位/日
亡くなった日1280単位/日1580単位/日

特別養護老人ホームでは利用者さんに対して、必要な数の医師の配置が義務付けられています。したがって、ほとんどの施設で看取り介護加算Ⅱを算定することが可能です。

特定施設入居者生活介護の算定要件と単位数一覧

つぎは、特定施設入居者生活介護の算定要件と取得できる単位数です。

加算の種類要件
看取り介護加算Ⅰ・Ⅰの要件をすべて満たしている
看取り介護加算Ⅱ・Ⅰの要件をすべて満たしている
・看取り期に夜間も看護師を配置している
算定できる期間看取り介護加算Ⅰ看取り介護加算Ⅱ
亡くなる31日~45日前72単位/日572単位/日
亡くなる4日~30日前144単位/日644単位/日
亡くなる前日、前々日680単位/日1180単位/日
亡くなった日1280単位/日1780単位/日

特定施設入居者介護では、看護師の配置が義務付けられていない施設もあります。看取り介護加算Ⅱを算定できるのは、看取り期に夜間も看護師を配置している施設のみと覚えておきましょう。

グループホームの算定要件と単位数一覧

最後にグループホームの算定要件と取得可能な単位数を押さえていきましょう。

加算の種類要件
看取り介護加算Ⅰ・Ⅰの要件をすべて満たしている
算定できる期間看取り介護加算Ⅰ
亡くなる31日~45日前72単位/日
亡くなる4日~30日前144単位/日
亡くなる前日、前々日680単位/日
亡くなった日1280単位/日

グループホームは医師や看護師の配置基準がないため、看取り介護加算Ⅱは算定対象外となっています。

看取り介護研修で学べること

看取り介護加算を受けるために必要な看取り介護研修では、以下のような内容を学ぶことができます。

  • 看取り期における基本的な考え方
  • 臨終時に立ち会うときの心構え
  • 看取り期を過ごす利用者さんの身体的・精神的苦痛とは何か
  • 臨終時と、その後のご家族に対するケア方法
  • チーム内での情報共有方法や役割分担について
  • 看取り後に実施するケアの評価方法など

その方らしい最期を迎えるために、上記の内容について学ぶことはとても重要です。適切な対応ができるよう心得ながら研修に臨みましょう。

正しい知識と技術で看取り介護を実施しよう

近年は延命治療ではなく、看取り介護を望む利用者さんとご家族が増えてきています。今後も看取り介護のニーズは高まると予想されるでしょう。施設で働く介護スタッフとして、看取り介護加算の算定要件や、看取りケアに対する正しい知識を学び押さえておくことは大切です。看取り対応については下記記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

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