介護職の給料アップは本当?手当支給の概要や待遇改善について

超高齢社会である日本では、介護職の方の活躍が欠かせません。しかし、介護職は離職率が比較的高いことが知られています。背景にはさまざまな要因がありますが、中でも賃金に対する不満が顕著です。国は、介護職の離職を防ぐため、今後の人材育成を目的として、「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金」の交付を決定しました。この記事では、介護職の給料アップのための手当支給概要や、待遇改善施策について紹介します。

月額9000円の手当が支給?!特例交付金とは

岸田政権下である2021年11月の閣議決定で、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を行うことが決まりました。どういった背景で施策が決まったのか、どんな内容なのかを詳しく見ていきましょう。

経済対策を行う背景

公益財団法人介護労働安定センターが行った2020年度の「介護労働実態調査結果」をもとに紹介します。

介護職における3職種(訪問介護員・サービス提供責任者・介護職員)の離職率は14.9%。離職率については、訪問介護員は無期雇用職員が、サービス提供責任者と介護職員の離職率は有期雇用職員のほうが高くなっています。離職率の経年変化では年々改善されているものの、訪問介護員の離職率は増加傾向に

「現在の仕事の満足度」に関する質問では、仕事の内容ややりがいに対する満足度がもっとも高い結果となっています。反対に賃金に関しては不満を抱えている方が多く、「やや不満足」「不満足」と答えた方が他の質問事項よりも多いことがわかりました。

2020年10月時点の高齢化率は28.8%で、2065年には38.4%にまで拡大することが推計されています。また、日本の総人口は約1億2,000万人(2020年10月時点)ですが、2065年には9,000万人を下回ると想定。高齢化率は上昇する一方で総人口が減少するとの見通しから、介護の担い手である世代の人材不足の懸念と、介護職の需要拡大が考えられるでしょう。

【2022年最新】臨時特例交付金の概要

こういった背景や新型コロナウイルス感染症が蔓延したことによる人材不足の露呈をきっかけに、福祉や介護に携わる職員の処遇改善が話し合われました。結果、誕生した事業が「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金」です。

これは、福祉・介護職員を対象に、2022年2月から9月までの間、収入を3%ほど引き上げるための措置を行う事業です。「収入を3%ほどアップ」とは、月額で9,000円相当になります。10月以降は制度が切り替わるものの、介護報酬に組み込まれて継続される予定です。

ただし、賃上げ効果が継続される取り組みでなければ意味がないとされているため、交付金取得にはいくつか要件が設けられています。

<取得要件>

  • 処遇改善加算Ⅰ~Ⅲのいずれかを取得している事業所
  • 上記かつ2022年2月・3月から実際に賃上げを実施している事業所
  • 賃上げ効果が継続されるように、補助金の3分の2以上は福祉・介護職員などのベースアップなどの引き上げに使うこと

事業所の判断で、他の職員の処遇改善ができるようになっているのもこの交付金の特徴です。

介護職だけ月額9,000円アップになるの?

先ほど少し触れたように、この交付金の運用は柔軟性があります。介護職に限らず、処遇改善加算Ⅰ~Ⅲを取得している事業所の判断によっては、他の職員の処遇改善に使ってもOKなのです。つまり、この交付金は介護職員全員一律支給ではありません

さまざまなメディアでの取り上げ方を見ると、あたかも全員一律支給のように感じますが、勘違いしやすいポイントのため注意してください。

交付金は以下の算定式によって計算され、事業所に支給されます。

交付額=ある月の総報酬({基本報酬+加算減算}×1単位単価)×交付率

交付金の配分は事業所しだい。他の職員にも配分するのであれば、一人が受け取る分は9,000円よりも減る可能性が高くなるのです。

介護職員の待遇は改善されつつある

今回の臨時特例交付金支給よりも前から介護職員の処遇に関しては問題視されており、国は対策を行っていました。加算条件を5つ設け、区分ごとの条件をクリアした事業所に対して賃金改善のための加算を実施する「介護職員処遇改善加算」です。

最高額である加算Ⅰを取得すれば、介護職員一人当たり月額3万7,000円相当の加算が受け取れます。最低額は加算Ⅴで、月額1万2,000円相当です。

この他にも2019年からは「特定処遇改善加算」が設けられ、さらなる加算支給を実施。月額平均8万円相当の給料アップが目安のこの加算は、技能や経験がある勤続年数10年以上の介護職員の処遇改善を目的にしていますが、配分に関しては事業所に任されています。特定処遇改善加算は、今まで設定されている処遇改善加算に上乗せする仕組みのため、他の加算の有無によって傾斜が付けられているのが特徴です。

こういった制度が影響し、介護職員の処遇は改善傾向にあります。厚生労働省による「介護従事者処遇状況等調査結果の概要」によると、2012年の調査では、常勤介護職員の平均月額は27万5,700円でした。一方、2020年度の常勤介護職員の平均月額は32万5,550円になっています。この8年間で5万円ほど給料がアップしていることがわかるはずです。

今後も介護職への給料アップは検討されているため、状況のさらなる改善も期待できるでしょう。

介護職の給料アップにはどんな方法がある?

介護職に対する処遇改善が行われていますが、自分自身で行える給料アップ方法もあります。どのような方法があるのでしょうか?

資格を取得する

介護職は資格がなくても働くことができますが、給料アップを考えると資格取得がおすすめ。保有資格があるかないかで平均給与が2万円ほど異なります。基本給が高くなるケースや資格手当が付くケースなどがあるためです。今後のキャリア形成でも資格は必要になる場合が多いでしょう。

管理職を目指す

主任やリーダーなど管理職になると基本給がアップすることも。役職手当が付く可能性もあります。ただし、管理職になるために一定の要件が設けられている場合もあるため、まずはどんな要件が設定されているのかチェックしてみると良いでしょう。

夜勤を増やす

夜勤をすると夜勤手当が支給されます。通常の給料に加えて割増されているため、夜勤を増やすことで給料をアップさせることが可能です。ただ、夜間の勤務となるため、自分が夜勤に向いているのかを熟考してから実行にうつすようにしましょう。

待遇の良い事業所へ転職する

事業所によって介護職員への待遇内容は異なります。より良い待遇の勤務先を探して転職するのも給料アップの方法のひとつです。転職する際には、事前に職場環境や人間関係などもしっかり下調べをしておきましょう。

介護職の待遇改善で今後注目の職業に

世界に類のない超高齢社会である日本では、介護職員は欠かせない存在です。人材確保や育成のために、国が今後も処遇改善策を打ち出していくことが考えられます。それによって給料アップも期待できるでしょう。もちろん「給料が安すぎる」と嘆くばかりではなく、自分自身で実践できる給料アップ策などを行いながら、スキルアップすることも忘れないでくださいね。

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