介護分野での生産性向上とは?メリットと具体的な方法を理解しよう

介護分野は、慢性的な人手不足です。加えて、少子化や高齢化が原因で、直近だけでなく、将来の人材不足も懸念されています。少ない人員で、きめ細やかで丁寧な介護サービスを提供しようと思うと、「一人ひとりの生産性を上げる」必要があるのです。そこで今回は、介護分野での生産性向上とはどういうことなのか、またメリットや生産性向上のための方法などについて見ていきましょう。

介護分野における生産性向上とメリット

国の予測によると、日本の人口は、2053年に9,924万人となり、2065年には8,808万人になると考えられています。

また、高齢者人口は増加を続け、2042年をピークに少しずつ減少すると推計されていますが、国全体の人口が減るために、高齢化率は上昇し続けるでしょう。日本全体における労働力人口が減っているために、介護現場でも人材不足が大きな問題になる可能性があるということです。

今でもなお人材不足の介護現場が、さらなる人材不足に陥るとなると、一人ひとりの生産性を上げる必要があります。まずは、介護分野における生産性向上とはどういうことなのか、生産性向上のメリットについても見ていきましょう。

介護分野での生産性向上とは?

そもそも生産性とは、投入した労働力によってどれだけの成果を得られたのかを算出する指標のことです。介護分野に置き換えると、介護スタッフが仕事をすることで、どれくらいの成果を生み出しているのかということになります。

具体的にいうと、同じ仕事を2人の介護スタッフにしてもらったとしましょう。A介護スタッフは、生産性が高いため30分で仕事を終えました。次にB介護スタッフは、Aスタッフよりも生産性が低いため1時間かかってしまいます。

どうしてこのような違いが生まれるのでしょうか?経験や技術力の差はあるかと思いますが、B介護スタッフには業務の効率化ができていない可能性も。

介護現場における業務の効率化は、生産性向上につながります。どのように業務を改善していけば良いのでしょうか?

それは、介護業界にある「3M(ムリ・ムダ・ムラ)」」をなくすことです。3Mとは、簡単に言うと、無理のある介護サービス、同じような事務作業による時間の無駄、介護スタッフの記録の方法や介護サービスの質のムラなどがあげられます。

これらの3Mを改善していくことで、介護現場における生産性は向上していくでしょう。

生産性向上のメリット

介護現場における生産性向上が促進されるとどんなメリットがあるのでしょうか?主なメリットは以下の通りです。

  • 離職率が下がる
  • モチベーションの向上
  • 利用者さんの満足度が向上する

介護スタッフの仕事にやりがいがあって、職場環境が整った職業であることが広まれば、「異なる分野から転職してみようか」と検討する方も出てくるかもしれません。

こういったメリットがある一方で、生産性向上のための機器を導入するコストがかかったり、仕組み作りに時間がかかったりすることなども考えられます。メリットだけではなく、デメリットも理解しておく必要があるでしょう。

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厚生労働省が示す生産性向上のガイドラインと現場での取り組み

介護現場全体における生産性向上は、特定の介護施設だけの取り組みではどうにもなりません。国も介護現場における人材不足を懸念し、生産性向上のための取り組みを推進しています。

ここでは、厚生労働省が示す生産性向上のガイドラインをもとに、現場での取り組みについて見ていきましょう。

職場環境の整備

まずは介護スタッフが働く職場環境を整備する必要があります。3Mをなくすための整理整頓や清掃、清潔な状態の維持、決められたルールを正しく守れているかなどをチェックしていくと良いです。

業務内容の再構築

業務内容の再構築というと、難しく聞こえるかもしれません。しかし簡単に言えば、職員の役割分担を明確化して、業務内容を決めれば良いということです。特定の介護スタッフに仕事が偏っていないかなどを確認していきましょう。

テクノロジーの導入

大柄の利用者さんを介護スタッフが1人でサポートするのは無理があります。この場合は、課題に合った介護ロボットを利用したりセンサーを導入したりするなど、テクノロジーの導入を検討するのもおすすめです。

手順書の作成

介護サービスの提供方法や、引き継ぎ方法などの手順はどうなっていますか?介護スタッフによって手順が異なるというケースもあるかもしれません。この場合、時間がかかったり、引き継ぎ漏れが出たりする可能性があります。

必要な申し送り事項をあらかじめ用意して標準化すると、トラブルを防ぎつつ生産性向上につながるでしょう。

記録や報告書の工夫

介護スタッフは、利用者さんの様子を記録して報告しなければなりません。また報告書の作成も必要になるため、記録や報告書の作成だけで時間がかかってしまうことも。毎回同じ内容を記載する部分はフォーマットにするなどの工夫が必要です。

情報を一元管理できるように、タブレット端末やスマホによるデータ入力を活用してデータを共有するのも良いでしょう。

情報共有の工夫

介護スタッフは、利用者さんの元に行って仕事をしているため、タイムリーな指示をしにくいという面があります。また、さまざまな管理者から違った指示があることも。情報の一本化や共有のために、インカムを使うなどの取り組みをすると良いでしょう。

OJTの仕組みづくり

OJTとは「On the Job Training」のこと。簡単に言えば、実務研修のことです。しかし、教育担当の介護スタッフによって教え方が違う点がデメリットに。介護施設全体の業務の手順やケアの質を一定に保つためには、教育体制を整える必要があります

理念や行動指針の徹底

働く介護施設での理念や行動指針を理解していないと、イレギュラーなことが起きた場合に、何を優先すれば良いのかわからなくなり、判断を間違うことも。そうなると業務が止まって他の介護スタッフの生産性を下げてしまう場合もあります。

利用者さんに迷惑をかけないことはもちろんのこと、全介護スタッフがいざというときに困らないようにするためにも、施設の理念や行動指針を理解・徹底できる場を作るようにすると良いでしょう。

経営陣が考えるだけでなく介護スタッフの意識も大切

介護現場での生産性向上には、テクノロジーの導入なども必要になるため、介護スタッフは関係ないと考える方もいるかもしれません。しかし、働きやすい職場環境にするためには、介護スタッフからの現場の声が必要です。「どういった点で困っているのか」、「こうしたらもっと効率的になるのではないか」などの声をあげるようにしましょう。

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