【介護施設の救急搬送事例】119番するのはどんなとき?

介護施設で働いていると、利用者さんの病状が急変したりケガをしたりする場面に遭遇することがあります。病状やケガの程度によっては、救急搬送するかどうかを迷うこともあるでしょう。この記事では、介護施設で起こりうる救急搬送の事例とともに、救急車を要請すべき症状や119番通報する際に注意が必要な点を解説します。いざというときに的確に対処できるよう、すでに介護施設で働いている方やこれから介護スタッフをめざす方は、ぜひご一読ください。

介護施設で救急搬送するべき症状とは?

介護施設で働く新人スタッフや緊急時対応の経験が少ない場合、すぐに救急車を呼ぶべきかの判断がむずかしいことがあるでしょう。ひとつの目安としては、介護スタッフによって施設内で応急処置ができる症状であるかどうかが基準となります。例えば、下記のような事例では、すぐに救急車を要請すべきでしょう。

  • 意識がない
  • 呼吸困難
  • 出血が多い
  • 骨折が疑われる
  • けいれんしている
  • 中等度から重度の熱中症
  • 激しい腹痛
  • 胸部が締めつけられるような痛み

119番通報するまでの流れ

利用者さんのケガや急変を発見してから救急車を要請するまでの間に、介護スタッフがとるべき行動について、確認しておきましょう。

急病人やケガ人のそばを離れない

利用者さんの急変やケガを発見した介護スタッフは、基本的にその場を離れてはいけません。すぐに大声や通信手段を使って応援を呼び、必要に応じてAEDを依頼します。利用者さんの安全確保に努め、状態の変化を見て対応しましょう。

救急車を要請する

利用者さんが大量出血していたり、呼吸困難の状態にあったりする場合など、明らかに深刻な状態である場合は、すぐに救急車を呼びます。また、119番通報を迷う症状のときは、常駐またはオンコールで待機している看護師に状態を説明し、指示に従いましょう。

119番通報したあとの流れ

119番通報をしてから救急車が到着するまでの間に、その場にいる介護スタッフがするべきことについてまとめました。

必要に応じて応急処置をする

119番担当者や介護施設の看護師と連携しながら応急処置を行いましょう。とくに呼吸、脈拍の低下や心停止の状態にあるときは、迅速な処置が必要です。救急車が到着して救急隊に引き継ぐまで、心肺蘇生を行います。AEDを用いることもあるため、使い方を知っておくことが大切です。

利用者さんの状況を整理する

以下の項目を救急隊に伝える必要があるため、救急車が到着するまでの間に整理しておきましょう

  • 急変またはケガをしてから現在までの状態
  • 既往歴や服用中の薬など
  • 日常生活動作(ADL)などの状態

ご家族に連絡する

ご家族への連絡はとても重要です。入院や手術の際はご家族の同意書が必要になるため、早めに伝えましょう。搬送先の情報をはじめ、発症から現在までの経緯の説明などを行います。また、状態によっては延命措置の意向についても、しっかりと確認しましょう。

介護施設で起こりうる救急搬送事例

ここでは、介護施設で発生しやすい緊急搬送の原因となる事例について3つ紹介します。各項目の詳しい内容や対処法などについても、関連記事とともにご一読ください。

その1.食中毒

食中毒の原因となる菌は、夏に発生しやすいものや冬に発生しやすいものなど多種多様です。したがって、1年中注意が必要といえるでしょう。介護施設の利用者さんの中には免疫力が落ちている方もいます。免疫力が低下した高齢者が食中毒を発症した際には、重症化のリスクがあり、場合によっては救急搬送が必要になることを覚えておきましょう

介護施設で起こりやすい食中毒の事例については、こちらの記事も参考にしてみてください。

(関連記事)介護施設で起こりやすい食中毒とは?5つの事例を紹介

その2.ヒートショック

ヒートショックとは、急激な温度変化により血圧が乱高下し、めまいや失神、血管に起因する重篤な症状があらわれることです。冬に起こりやすく、浴室などで発症することが多いといわれています。浴室でヒートショックが起こった場合、浴槽に転倒して溺れるなどの事故につながることもめずらしくありません。利用者さんの入浴中は意識的に様子を確認し、ヒートショックを起こしているのを発見した際は、すぐに救急車を呼んでください。

高齢者が注意すべきヒートショックに関することは、こちらの記事でも解説しています。

(関連記事)ヒートショックとは?高齢者が気を付けたい場所や対処法

その3.誤薬

介護施設において、利用者さんに処方された薬の用法用量を誤ったり、他の利用者さんの薬を間違えて服用させてしまったりことで生じる事故を、誤薬といいます。薬は利用者さんの健康維持のために欠かせないものですが、飲み方を誤ると重篤な健康被害につながる恐れがあることを忘れてはいけません。薬の管理を正しく行うことが基本ですが、万一誤薬があったときには、上司や看護師に報告し、利用者さんに異変がないかをすぐに確認しましょう。また、誤薬後の診断や処置は医師のみが行える行為のため、施設の状況によって救急搬送も必要になります。

介護施設で過去に起こった誤薬の事例や事故防止の対策などについては、こちらの記事もご覧ください。

(関連記事)介護施設で実際にあった誤薬事例とは?事故から学ぶ対策法を解説

慌てずに落ち着いて対応しよう

介護施設で救急搬送が必要になったとき、慌てずに対応するためにも、日頃から緊急時のマニュアルをしっかりと把握しておくことが大切です。過去の事例も参考にすれば、介護スタッフとしてどのように行動すべきかをイメージするのに役立ちます。また、介護スタッフ同士の連携を強化したり、研修などに積極的に参加したりすることで、緊急対応時の不安を軽減し、落ち着いた行動ができるでしょう。

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