【高齢者の膝の痛み】対処法は?原因・予防法についても解説

高齢者から膝の痛みに関する悩みを聞く機会は多いでしょう。寒い時期にはひどくなりがちです。内閣府の発表した平成30年版高齢社会白書によると、65歳以上の要介護者が、介護が必要になった原因の第4位として挙げられているほど、手足の関節の痛みは高齢者にとって重い悩みなのだそう。そこで今回は、高齢者の膝の痛みに対する対処法についてご紹介します。原因や予防法についても併せて解説するので、参考にしてください。

高齢者の膝の痛みはこれが原因だった!

痛みにアプローチするためには、痛みの根源を知ることが大切です。まずは高齢者の膝の痛みの原因を見ていきましょう。

膝関節の軟骨・半月板の摩耗

膝は4つの骨から成り立っており、継ぎ目の周りは関節軟骨と半月板に守られています。加齢が進むと、軟骨や半月板は摩耗していき、炎症を起こしやすくなるのです。その結果、膝が腫れる、熱を持つといった症状が起こり、膝痛になってしまいます。
炎症症状による痛みは、動くと悪化する恐れがあるので、病院の早めの受診がおすすめです。

肥満・運動不足・活動量の低下

肥満や運動不足、活動量の低下も原因の一つです。体を動かす機会が減ると体の活動量が低下してしまい、筋肉量や体力、持久力などの減少をもたらします。膝関節をバランスよく支えることができなくなり、膝への衝撃や負担が増えて、痛みへと繋がるのです。さらに、動かないことが体重の増加に繋がり、ますます動けなくなってしまうという負のループにも繋がります。

体や脚のゆがみ

膝の痛みを訴えている方に、体や脚のゆがみはないでしょうか。O脚やX脚といった脚のゆがみは、関節軟骨の極端な摩耗を引き起こします。また、外反母趾や偏平足といった足の変形も、足裏で吸収するはずだった衝撃を膝が受けてしまうことになり、膝へのダメージが増えていくのです。

膝痛の放置

膝が腫れた後にも注目しましょう。膝の炎症が落ち着いた後も、膝痛が継続する場合があります。これは膝関節が炎症後、関節包という膝関節の周りを包んでいる膜が固くなり、膝の動きに対応できなくなってしまうからです。スムーズに歩くことができず、さらに関節包が無理に引っ張られるため痛んでしまいます。

高齢者が膝の痛みを感じたときの対処法

要介護にも繋がるほど、高齢者にとって深刻な悩みの一つである膝の痛みですが、痛みを和らげるための対処法がないわけではありません。ここからは、膝の痛みを感じたときの対処法をご紹介します。

膝や体を温める

膝が冷えると、血行不良になり筋肉や関節の動きが固くなることで、痛みを引き起こします。特に高齢者は血行不良が起きやすいのです。膝や体を温めれば血行が促進され、筋肉がほぐれて膝の痛みも和らぎます
膝を温める方法には入浴の他、カイロや蒸しタオル、サポーターなどが有効です。特におすすめなのがサポーターで、冬場に冷えがちな膝を温めるだけでなく、膝周りの筋肉にかかる負担を軽減させる効果もあります。
しかしながら、関節が腫れている、熱を持っているという場合は逆効果になることがあるので対処法として取り入れる場合には注意しましょう。

膝の体操をおこなう

膝の体操をするという方法もあります。高齢者は膝の痛みを感じると動かなくなりがちですが、膝の関節の可動域を広げるためのストレッチや、下半身の筋トレ、ウォーキングなど、主に有酸素運動を使った運動療法は、痛み止めと同じくらい効果的な対処法です。高齢者が膝の痛みが強くて動けない場合でも、薬やサポーターなどを使いながら適した方法で根気よく運動を続けることが膝の痛みを緩和するためには大切です。
体操などで体を動かすことは筋力アップや減量にも繋がり、痛みが引いた後もさらに歩きやすくなり、好循環が生まれるでしょう。

マッサージも効果的

膝のマッサージも効果的な対処法です。膝の痛みを感じる部分を中心に、周囲の筋肉を揉みほぐすように行います。
膝裏は力を入れすぎず両手で、次にふくらはぎは下から上へとらせん状に揉みあげ、太ももから足のつけ根へはさすり上げるように揉みましょう。最後に、両手の人差し指と親指で円をつくるようにして膝のお皿を囲み、お皿そのものを上下左右に軽く動かすようにしてマッサージすれば完了です。
血行を促進するようなアロマオイルを使用すれば、リラックス効果も得られ、介護する側もされる側も気分転換になります。

薬や病院を利用する

齢者の膝の痛みには病気が隠れている場合もあるため、まずは病院で診察を受けることも対処法として大切です。痛みが軽症の場合、炎症や痛みをとるために薬物療法を用いることもありますが、病気そのものを治せるわけではありません。やはり第一には運動療法と考えられており、その上で薬物療法、そして最終手段として膝関節の手術と段階が上がっていきます。医師の判断を仰ぎながら、適切な対処をしていくことが今後の生活のためにも重要です。

高齢者が膝の痛みを感じないための予防法

そもそも高齢者が膝の痛みを感じないために予防していくことも大切です。ここからは、膝の痛みを感じないために簡単に実施できる予防法をご紹介します。施設でのレクリエーションにも以下の点を取り入れてみてください。

適度な運動で筋肉と柔軟性を高める

まずは日頃から適度な運動を行い、脚の筋肉をつけるとともに膝周りの柔軟性を高めておきましょう。適度な運動はコラーゲンの生成を促進し、関節軟骨に栄養が行き渡りやすくなることが知られています。
ただし、長時間の運動や負荷の高い運動を行うと、逆に膝に負担をかけてしまうことになります。適正な運動量を見極め、血流を促すとともに筋力アップを目指しましょう

適度な体重をキープする

人が歩くとき、膝には瞬間的に体重の7倍負荷がかかるといわれています。そのため、適度な体重を維持することは、膝の痛みを予防する方法として有効です。
食事量のコントロールも大切ですが、お散歩や早歩きなどの有酸素運動を取り入れて、カロリーを消費する運動を行うようにしましょう。お散歩は1回20分~30分を週に2回以上行うのが理想です。

普段から膝の負担を軽減させておく

階段や急な坂を避けるというように、普段から膝の負担を軽減させることも有効です。正座や和式トイレが避けられるのはこのためですが、座っているときに足を組まないようにして関節や筋肉バランスを崩さないようにしてみましょう。また、静かに歩いたり、手すりを利用したりという方法も、膝の負担を軽減します。

レクリエーションをうまく利用して膝の痛みの対処・予防を心がけよう

高齢者の膝の痛みを軽減するには、施設で対処法や予防法を踏まえたレクリエーションを行うことが大切です。利用者さんそれぞれの症状や状態を見極め、個別で適切な処置をすることは重要ですが、利用者さんを集めて一斉にできるレクリエーションであれば、膝の痛みだけでなく他の症状に対しても効果があり、対処や予防にかける時間を削減できます。高齢者の膝の痛みを訴える方が減るよう、内容を意識して対処法や予防法として取り入れてみてはいかがでしょうか。

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