高齢者向けの杖の基礎知識を解説!おすすめの種類や選び方のポイントは?

高齢になると足腰の筋力が低下し、1人で歩行することに不自由を感じる方が増えてきます。足腰が弱くなってきた高齢者にとって、杖はスムーズに歩行するための重要なアイテムの1つ。杖にはさまざまな種類があり、体の状態に合わせて選ぶことが重要です。この記事では、高齢者向けの杖の種類や選び方のポイントをご紹介します。利用者さんにいつでもアドバイスできるよう、杖に関する基礎知識を身に付けておきましょう。

高齢者が杖を使う目的やメリットとは?

まずは、高齢者が杖を使う目的やメリットについて、具体的に解説しましょう。

歩行の補助

足腰の弱った高齢者にとって杖は、第三の足として歩行の補助をするという役割を担っています。杖を使えば、体の安定性が高まり、ふらつくのを抑えながらスムーズに歩行できるようになる点も大きなメリットでしょう。

足腰への負担軽減

筋力が低下すると、歩行の際に足腰に大きな負担がかかります。負担のかかる状態が続くと、足腰に痛みを感じ、悪化してしまう可能性も。杖を使えば、足腰で支えている体重を杖にも分散できるため、足腰への負担が抑えられ、痛みを感じにくくすることができます。

安心感がある

歩行が難しくなると、転倒の不安から外出の機会が減ったという方も。杖を使用すれば、安定してスムーズに歩行できるため、不安感が軽減し、安心して歩くことが可能です。杖があれば1人で外出ができ、自分でできることの範囲も広がるため、QOLの向上にも役立つでしょう。

高齢者が使う杖の種類

一言で杖といっても、さまざまな種類があります。高齢者が使うことの多い杖をいくつかピックアップしたので、ご紹介しましょう。

T字杖

T字杖は、真っすぐの杖にT字型の握り手が付いたタイプの杖。誰でも扱いやすく、初めて杖を使う方や、杖がなくても歩けるけれど安定した歩行をするために使用したい方などにおすすめです。
T字杖には、使いやすさに合わせて長さを調節できる伸縮タイプ、折りたたみ式でコンパクトに持ち歩ける折りたたみタイプ、調節不可の長さ固定タイプなどがあります。また、デザインが豊富で、屋内用と外出用に使い分けるなど、おしゃれを楽しむことも可能です。

多脚杖

多脚杖は、杖の脚の先が3~4点に分かれた安定性の高い杖。脚先が分かれている多脚杖は、段差があるとバランスを崩し転倒してしまう可能性があります。介護施設や医療施設内など、段差が少ない屋内用として使うことが多いのが特徴です。多点杖や、4点杖などと呼ばれることもあります。

ロフストランドクラッチ

ロフストランドクラッチは、杖の上部に腕を通すための輪(カフ)が付いている杖。カフの下に握り手が付いており、カフと握り手の2ヶ所で体重を支えるため、安定性やサポート力が高いことが特徴です。腕力や握力が弱い、体にマヒがある高齢者の方におすすめの杖です。

肘支持型杖

肘支持型杖は、杖の上部に肘を乗せる横木とその先端に握り手が取り付けられ、肘全体で体重を支えるタイプの杖。肘や手首が自由に伸ばせない方でも使いやすく、リウマチ杖と呼ばれることもあります。

松葉杖

松葉杖は、脇あてとグリップが付いたタイプの杖。一般的に、骨折やねんざなどをしたときによく使われますが、補助として使用されることも。多脚杖やロフストランドクラッチよりもサイズが大きく、上半身で体重を支えるため、足腰の負担軽減に役立ちます。

杖を選ぶときのポイント

スムーズに歩行するためには、高齢者の方それぞれに合った杖を選ぶことが重要です。杖を選ぶ際に注目すべきポイントについて解説します。

身長に合っているか

高齢者の方が杖を選ぶときのポイントは、身長に合った長さかどうかです。身長に合っていないと、安定して歩行できなかったり、かえって足腰に負担がかかってしまったりする可能性があります。身長や腕の長さは人それぞれなので、自分に最適な杖を見つけることが重要です。

使いやすいか

高齢者の使う杖には、素材や太さなどさまざまな種類があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、重要視したいポイントを明確にしておくことが重要。例えば、軽さを重視すると耐久性に欠ける、頑丈なものは重くて使いにくいなどです。
握り手に関しても、手の大きさや形、握力によって合う形状が異なります。握り手が手のサイズに合っていないと、手が疲れてしまい長時間使用できなかったり、手が滑ったりして不自由さを感じることも。実際に見て触って、使いやすいものを選ぶことが大切です。

用途に合っているか

杖には多くの種類がありますが、体の状態や用途に合わせて選ぶことがポイントです。屋内用として使うなら多脚杖、外出時に使うならT字杖やロフストランドクラッチなど、用途によって使い分けましょう。

杖の使い方や注意点

杖の基礎知識として、使い方や注意点を知っておくことも重要です。ここでは、杖の調整方法や正しい歩き方を解説します。

杖の高さの調整方法

杖を握り、足の先から15~20センチメートルのところに杖の先を置きましょう。このとき、肘の角度が30~40度くらいになることが最適な杖の高さと言われています。
最適な杖の長さは、『身長÷2+2~3センチメートル』という計算式から、目安の数値を出すことも可能です。この計算式で出た数値はあくまでも目安ですので、実際に見て試すようにしましょう。

杖を使った正しい歩き方

杖を持つ際は、利き手で持つほうが安定します。片足に痛みや筋力の低下がある場合は、その足とは反対側の手で杖を持ちましょう。握り手は、人差し指と中指ではさむように握ります。

  1. 杖を前方に出す
  2. 杖に体重をかけながら杖とは反対の足を出す
  3. 杖を持っているほうの足を出し、両足を揃える

上の流れをくりかえすことが、杖を使った正しい歩き方です。

杖を使う際の注意点

杖を正しく使用しないと、足腰への負担が大きくなって症状をさらに悪化させたり、転倒したりする可能性があります。
高齢者が杖を使う際には、杖先(脚先)のゴムがすり減っていないか、握り手は痛くないかなど、杖の点検を定期的に行うことが重要です。
どの杖がいいのか迷っている場合や実際に購入する際には、理学療法士などの専門家に相談して決定するのがおすすめです。

杖は介護保険でレンタル可能!

杖はどこで買うべきか相談されることもあるでしょう。デパートや大手スーパー、ホームセンターなど介護用品の取り扱いがあるお店やネットショッピングでも購入できます。

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杖は福祉用具として扱われるため、介護保険サービスでレンタルすることが可能です。レンタルするには、ケアマネジャーに相談し、歩行補助杖のレンタルが必要である旨を記載したケアプランを作成する必要があります。要介護認定を受けていれば介護保険が利用できるため、1~3割の自己負担でレンタル可能。要介護認定を受けていない場合は、全額負担すればレンタルできます。

最適な杖選びのアドバイスをしよう

介護施設などでは、杖を使用している方が多くいらっしゃいます。足腰の弱った高齢者にとって杖は、安心安全に歩くために欠かせないアイテムの1つ。日々の運動やリハビリを通じて体の状態は常に変化するため、杖に関する知識を身に付け、利用者さんの状態や目的にあった杖を使っているかチェックすることが重要です。

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