ACP(人生会議)とは?介護職が知っておきたい人生最期の迎え方

利用者さんと、そのご家族が悔いの少ない最期を迎えるために役立つACP。人生をどう終えるかを話し合う「人生会議」と呼ばれる大切な取り組みです。今回は、ACPとはなにか、介護職としての役割や、ACPの進め方について解説しました。介護職として押さえておきたい、利用者さんの思いに寄り添うポイントにも触れています。人生の最期という大切な場面を全力でサポートできるよう、ACPについて知りたい方はぜひ参考にしてください。

ACP(人生会議)とは?

ACPはアドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning)の略で、人生会議とも呼ばれています。ご家族の死を経験した方の大半が、人生の最期について本人と話し合っておけばよかった…と後悔をしているのだとか。人生の終わりは重要な決断を迫られることが多いです。そのため、事前に本人の希望を確認し、その人らしい最期を迎えることが大切という考えが、ACPの取り組みが重要とされる理由になっています。

ACP(人生会議)の目的

人はいつ人生の最期を迎えるか分かりません。高齢の利用者さんなら、なおさらです。そんな「もしものとき」に備え、利用者さんが望む医療やケアを事前に話し合い、意思表明することがACPの目的になります。

ACPは利用者さんの思いがメインですが、ご家族の思いを適宜反映させることも大切です。もっとこうしてあげたかった…といった後悔が少なくなるよう、利用者さんの希望に沿いながら、ご家族の要望も取り入れていきましょう。ご家族も一緒に利用者さんの最期を考えることが、グリーフケアにも繋がるようです。

ACP(人生会議)における介護職の役割

介護職は、利用者さんの希望や人柄、人生観に寄り添った対応が求められます。利用者さんらしい納得のいく最期を迎えられるよう、適宜話し合いの場を設けながら、利用者さんをサポートすることが介護職の役割です。

ただし、ACPはあくまでも利用者さんの意思により行うもの。今からそんなことを考えるなんて不吉だ…と拒絶反応を示す利用者さんもいることでしょう。そんなときは無理にACPを進める必要はありません。人生の最期について考えたくないという利用者さんの気持ちを尊重することも忘れないようにしてください。

ACP(人生会議)の進め方

ACPは人生の最期をどのようにプランニングしておくかが重要です。では、ACPの進め方をご紹介していきます。

1.どんな最期を迎えたいかを考える

まずは利用者さんに、最期を迎えるうえで大切にしたいことや、どの様に過ごしたいのかを考えてもらいます。

  • 身内にできるだけ負担をかけたくない
  • 仕事や趣味を続けたい
  • 家族のそばにいたい

など、具体的に意思表明してもらうことが大切です。ここでヒアリングしたことは、利用者さんが意思疎通できない状況になっても、最優先事項として周囲が動く指標になります。どのような希望があるのか、利用者さんの思いを率直に表出してもらいましょう。

2.考えた内容を信頼できる人と共有する

考えた内容は、利用者さんが信頼する人と共有する必要があります。意思疎通が難しくなったときに備え、自分の代わりにプランニングした内容を周囲へ伝える役割をする人(ご家族など)を選んでもらいましょう。どんなときでも利用者さんの思いを尊重できる人を選ぶことが大切です。

3.主治医に今後の治療やケア、経過を確認する

利用者さんの思いを聞いたうえで、今後予想される病状の変化や、必要な治療・ケアについて主治医に確認します。今後起こりうる変化を知ることで、利用者さん自身も、自分の体に対する正しい認識を持ちながら生活を送ることが可能に。健康への知識を深めることにも役立ちます。

4.治療やケアに対する希望を医療・ケアスタッフと話し合う

今後の状況を踏まえながら、治療やケアに対する希望を、利用者さん、医療・介護スタッフだけでなく、代理人(共有すると決めた人)も含め話し合います

  • 施設で過ごしたい
  • 最期は自宅へ戻りたい
  • 人工呼吸器はつけない
  • 口から食べられなくなっても経管栄養はしない

など、利用者さんの素直かつ、具体的な思いを出してもらいます。利用者さんの希望に沿えるよう、介護職としてどのようなサポートが可能かを、ご本人やご家族に説明しておくと、安心に繋がりやすいでしょう。

5.書面に記録し、周囲と共有しながら、適宜見直しをする

話し合った内容は書面にまとめ、利用者さんにかかわるスタッフと共有します。これでプランニングは終了ですが、ACPは利用者さんの状況に合わせた変更が必要です。時間の経過とともに利用者さんの希望は変化するため、適宜見直し、このサイクルを繰り返しおこなうようにしましょう。

介護職として利用者さんのACP(人生会議)に寄り添うポイント

日々の生活の中で利用者さんとのかかわりが多い介護職だからこそ、ACPに寄り添うポイントがあります。介護職として、利用者さんの意思決定をサポートするにはどのようなことが大切か確認していきましょう。

定期的に利用者さんとの話し合いをおこなう

利用者さんの思いは、病状や時間の経過とともに変化します。利用者さんの状態や、心情の変化を見極め、定期的にACPを見直す話し合いの場を設けましょう。

ほかスタッフとの仲介役になる

施設で過ごす利用者さんにとって、介護職は家族に近い存在になることがあります。毎日のケアの中で得られる利用者さんとご家族の情報は、かかわりが深い介護職だからこそ把握できることも多いです。ACPを実現させるために必要な情報は、介護職が仲介役になり、ほかスタッフと共有していきましょう。

多職種との連携を図る

利用者さんやご家族の希望により、介護職だけでなく、医師や看護師、リハビリスタッフ、栄養士など他職種との連携が必要になることケースが多いです。どの職種と連携すれば、利用者さんのACPを叶えられるかを考えていきましょう。他職種との連携を図ることも介護職の重要な役割になります。

利用者さんらしい生き方をサポートしよう!

利用者さんらしい最期を迎えるためには、その方の人柄や考え方を尊重することがなにより大切です。普段から利用者さんの考えや、どんな人生観を持っているか、日常のかかわりの中で理解を深めておくようにしましょう。まずは、あなた自身のACP(人生会議)をおこない、人生の最期について考えてみてはいかがでしょうか。

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