介護職が知っておきたい義歯の着脱方法と手入れ方法

介護スタッフは、利用者さんの日常生活をサポートすることが仕事です。サポートは、ベッドから起きる動作を支援したり、トイレまで連れて行ったりするなど多岐にわたります。なかでも食事の介助や口腔ケアは一日に複数回行うため、義歯に関する知識を持っておく必要もあるでしょう。そこで今回は、介護スタッフに向けて利用者さんの義歯の着脱方法や手入れ方法について紹介します。

義歯にはさまざまな種類がある!

高齢になると唾液分泌の減少や歯磨き不足などによって、歯周病やむし歯になりやすい傾向にあります。そのため、総入れ歯や局部入れ歯などの義歯を使っている利用者さんも多くいらっしゃるでしょう。

まずは、義歯の種類を紹介します。

総義歯とは?

総義歯とは総入れ歯のことで、歯をすべて失っている方が利用するものです。総義歯は人工歯と義歯床で構成されており、義歯床には歯茎の役割があります。

局部義歯とは?

局部義歯は部分入れ歯のことで、なくなった歯の部分に人工歯と義歯床を装着します。局部義歯だけでは固定しにくいため、一般的には局部義歯にはクラスプと呼ばれるバネがついており、他の歯に引っ掛けることで固定する仕組みです。

ただし、なかにはクラスプがないタイプもあり、歯の状態や歯科医師の判断によって使う義歯の種類が変わります。

インプラント・ブリッジとは?

インプラントは、人口の歯根を歯茎に埋め込み、そこに人工歯を取りつけたもの。ブリッジは、残っている永久歯を土台として義歯を装着するものを指します。総義歯や局部義歯の着脱は可能ですが、インプラントやブリッジの場合は、基本的には着脱できません。

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義歯の着脱方法

基本的には利用者さんが義歯の管理をしますが、寝たきりの方や認知症の方、身体に障害を持った方の場合、自身で管理できない場合もあります。そういったときには、介護スタッフが義歯の着脱をサポートすることも。

ここでは、義歯の着脱方法について見ていきましょう。

総義歯の場合

総義歯を入れる場合は、上顎用の義歯から入れます。前歯の部分をつまんで回転させることで装着完了。装着できたら、上顎の真ん中あたりを指で押すことで、空気が抜けて密着させることができます。

次に下顎用の義歯を装着し、左右の奥歯の部分を軽く押すと固定できるでしょう。装着できたら、上下に浮きがないかを確認するために少し押すのがポイントです。

総義歯を外すときは、下顎の義歯から外します。下顎用の前歯を持ち、奥歯を持ち上げるようにするとスムーズです。外した総義歯をそのまま取り出すと、口角を傷つける可能性があるため、総義歯を少し回転させながら取り出すと良いでしょう。

上顎の義歯を外す場合は、前歯をつまんで奥歯のほうを下げるようにすると外れやすいです。上顎の義歯もそのまま取り出すと口角を傷つける可能性があるため、下顎用と同じく回転させると良いでしょう。

局部義歯の場合

局部義歯を装着する場合は、クラスプをかける歯にそわせて、ゆっくり押し込むと装着しやすくなります。浮いていると、外れたり痛みが出たりする可能性があるため注意しましょう。

局部義歯を外す場合は、クラスプがかかっている歯を押さえつつ、クラスプに指をかけて外します。義歯の両側にクラスプがあるタイプは、両方のクラスプを同時に動かすようにしてください。片方だけ動かすと、クラスプが変形する可能性があるためです。

義歯の手入れ方法

当たり前のことですが、義歯は食事や会話をする際に欠かせません。しかし長時間口に装着するため、食べ物のカスや唾液で汚れが付着しやすくなります。義歯の汚れを放置すると、口の中で細菌が繁殖して歯周病になることも。局部義歯を使用している利用者さんの場合、他の健康な歯がむし歯になることも考えられます

そのため、義歯の手入れは忘れずに行う必要があるのです。最後に義歯の手入れ方法について見ていきましょう。

総義歯や局部義歯の場合

義歯の手入れは、取り外した状態で行います。歯ブラシや義歯専用の洗剤を使ってきれいに洗いましょう。義歯用以外の歯磨き粉で洗うと、義歯を傷めてしまうため注意してください。

また、強くこすると割れる可能性があるため、やさしく丁寧に洗うことを心がけ、流水でしっかり洗い流しましょう。その他には義歯洗浄剤で洗う方法もあります。いずれの場合も義歯が変形する可能性があるため、熱湯ではなくぬるま湯か水を使いましょう

インプラント・ブリッジの場合

インプラントやブリッジをしている利用者さんの場合、基本的には取り外すことができません。自身の歯を磨くように歯ブラシでブラッシングします。歯間ブラシを使うと、歯と歯の隙間もきれいにできるためおすすめです。

義歯の取り扱いを理解しよう

介護現場では、総義歯に限らず局部義歯を装着している利用者さんも多くいることでしょう。いざというときに慌てないために、義歯の着脱方法や手入れ方法を知っておくと安心です。利用者さんには定期的なメンテナンスを提供しつつ、何か困ったことがあれば、定期検診などで歯科医師や歯科衛生士に相談すると良いでしょう。

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