ケアマネジャー試験が難しいのはなぜ?事前にすべき対策方法とは

利用者さんのケアプラン作成や事業者との橋渡し役など、介護現場を取りまとめるケアマネジャー。「将来的にはケアマネジャーに」と、資格取得を目指している方も多いかもしれませんね。ケアマネジャー試験は「難易度が高い」「難しい」といわれる資格試験の1つですが、取得すると大きなプラスとなる資格です。そこでこの記事では、ケアマネジャーの試験が難しい理由とともに、事前にすべき対策について紹介していきます。

合格率が20%以下の年も!?ケアマネジャー試験の難易度UP

まずは、「ケアマネジャー試験(正式名称:介護支援専門員実務研修受講試験)」の現状について、見ていきましょう。

ケアマネジャー試験の始まりは、1998年から。開始当時の合格率は44.1%と決して難易度が高すぎるということはありませんでした。しかし、第1回をピークに、合格率は徐々に下がっています。厚生労働省の「介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況等」によると、2016年度以降の合格率は次の通りです。

受験者数合格者数合格率
2016年度124,585人16,281人13.1%
2017年度131,560人28,233人21.5%
2018年度49,332人4,990人10.1%
2019年度41,049人8,018人19.5%
2020年度46,415人8,200人17.7%
2021年度54,290人 12,662人23.3 %
2022年度54,406人10,328人19.0%

ほとんどの年で、20%を下回っていることが分かるでしょう。合格率が下がっている要因はいくつかありますが、試験そのものの難易度が上がっていることもその1つと考えられています。試験の難易度が上がった理由には、制度に精通し、豊富な知識をもつ質の高いケアマネジャーを確保したいという思いもあるようです。

なぜ難しい?ケアマネジャー試験の難易度が高い3つの理由

ほとんどの年で合格率が20%を下回る、ケアマネジャー試験。試験自体の難しさはもちろん、次の要因も難易度に関係していると言われています。

2018年に受験資格が改定された

前述の表の2017年度と2018年度だけを抜粋したものを、以下で見比べていきます。すると、2018年度に大幅に受験者数が減っていることが分かるでしょう。これは、同年より受験資格が改定されたことが影響しています。

受験者数合格者数合格率
2017年度131,560人28,233人21.5%
2018年度49,332人4,990人10.1%

2017年までは、介護の実務経験が10年以上ある方もケアマネジャー試験にチャレンジできました。しかし、2018年からは以下の決められた職種で通算5年以上、かつ900日以上の勤務実績がなければ受験資格を得られません。これらの制度変更により、間口が一層狭まったことも、難易度を高める要因になっているでしょう。

<ケアマネジャーの受験資格を得られる職種>

  1. 医療・福祉系の国家資格
    ※医師・歯科医師・看護師・理学療法士・介護福祉士・社会福祉士など全20職種
  2. 生活相談員
  3. 支援相談員
  4. 相談支援専門員
  5. 主任相談支援員

深い理解度が求められる「複数選択方式」の解答法

ケアマネジャー試験では、「複数選択方式」と呼ばれる解答法が採用されています。これは、5つの選択肢の中から、2つもしくは3つの答えを選択するという方法です。実はこの解答法、選んだ2つもしくは3つの答えすべてが当たっていないと点数をもらえません。たとえ1つ当たっていたとしても、もう1つの答えが間違っていたら加点されないのです。このように、深い理解とより正確な知識が試されるため、必然的に難易度は上がります。「なんとなく分かる」「大体覚えている」というあいまいな知識では太刀打ちできない試験と言えるでしょう。

仕事との両立で時間が取れない

ケアマネジャーの受験資格には、決められた職種で通算5年以上、かつ900日以上の勤務実績が必須です。そのため仕事を続けながら、家事や育児、介護などと並行して試験勉強を進めている方も多くいます。すると中には、「思うように勉強する時間が取れない」という状況に陥る方も少なくありません。試験自体の難しさはもちろん、十分な対策が取れずに受験しなければいけないことは、難易度を高める要因であると言えるでしょう。

ケアマネジャー試験対策ですべき4つのこと

難易度の高いケアマネジャー試験ですが、チャレンジするなら合格を目指したいところ。そこで、ここからは試験対策ですべき4つのポイントについて見ていきましょう。

試験勉強は早めにスタートする

ケアマネジャー試験は、毎年10月の日程で開催されています。受験日を見据えながら、できるだけ早めに試験勉強をスタートしましょう。

ケアマネジャー試験では、120分で60問の問題を解いていきます。一見すると余裕があるようにも見えますが、専門用語や数字などが頻出するため、これらの語句が混ざった問題文に慣れることも必要です。十分な対策を行うためにも、時間の確保は欠かせないでしょう。とくに、仕事や育児、介護などと両立して試験勉強を行う方は、早め早めの対策が大切です。

専門用語はあやふやにせずしっかり理解する

介護や医療分野で使われる専門用語は、あいまいな理解で終わらせないよう心がけましょう。これらの用語があいまいなままだと、問題文を読むスピードが落ち、問題自体を正確に把握することも難しくなります。また、法律や制度の問題では普段聞き慣れない用語も多いため、意味をしっかりと理解することが欠かせません。たとえ得意な分野で知識として分かったつもりでも、実際には理解しきれていないこともあるため定期的な復習も大切です。

3年ごとの介護保険法の改正もしっかりチェック

介護保険法は、3年ごとに見直されています。近年だと、2020年に改正、2021年4月より施行されました。法改正には、そのときに解決すべき時事問題が反映されていることも多く、変更点は試験の問題にもなりがちです。そのため、ケアマネジャー試験を受験する方は、介護保険法の改正をしっかりチェックしておきましょう。「変更点」や「変更した背景」をセットで覚えておくとより理解が深まります。

過去問や予想問題を利用する

ケアマネジャーの試験対策には、過去問や頻出問題をまとめた予想問題を利用していきましょう。重要な内容は繰り返し出題されるため、過去問などで傾向を理解することができます。また、複数選択方式の解答法に慣れるためにも、これらの問題集を繰り返し解いていくことは役立つでしょう。問題の難易度によって補正はありますが、ケアマネジャー試験の合格基準は70%以上と高めです。頻出問題の取りこぼしが合否を分けることもあるため、しっかりと対策していきましょう。なお、都道府県ごとの福祉保健局の中には、公式サイトの専用ページや掲示板などにて、過去問をダウンロードできるところもあります。

ケアマネジャー試験は難易度高めだが大きなプラスになることも

高い知識をもち、制度を理解したケアマネジャーを輩出するため、資格試験の難易度は上がっています。受験資格もあり、誰もが簡単に合格できる試験ではありませんが、その分資格取得者にとっては確かな知識を証明する手段です。介護や福祉事業に携わる方や、これから携わっていきたいと考えている方は、ぜひ目指してみてはいかがでしょうか。

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